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野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

為替レートに重要な影響を及ぼす巨大取引の正体とは?

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第21回】 2009年5月16日
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 5月13日に、2008年度の国際収支統計が財務省から公表された(概要速報)。

 これに対して、新聞等の報道では、経常収支が07年度に比べて大きく減少したことを中心に報じていた。それはたしかに重要なことであるが、現代の世界では、他の項目も大変重要な意味を持つ。以下では、資本収支の動きも含めて、国際収支の動向の持つインプリケーションを考えることとしよう。

 まず経常収支の黒字は、07年度の24.5兆円から12.2兆円へと、ほぼ半減した。貿易・サービス収支では、これまで長期にわたって黒字だったものが赤字に転じた。また、所得収支の黒字も減少した。

 ところで、このような国際収支項目の変化と為替レートの変化を、どのように関連付けて理解することができるだろうか?

 まず、当然のことであるが、経常収支、資本収支、外貨準備増減、誤差脱漏のすべてを合計すれば、定義によって収支差はゼロとなる。つまり、結果的に見れば、超過需要はゼロになっているわけであるから、単に国際収支表を眺めているだけでは、為替変動の分析をすることはできない。

(これは、為替レートだけではなく、すべての財やサービスの価格決定について言えることである。事後的な記録としては需要と供給は必ず一致しているから、事後的データを見るだけでは、何が価格を変動させたかを知ることはできない)。

 したがって、重要なのは、何が主体的・意図的に変動する部分であり、何が受動的・事後的に調整する部分であるかを知ることだ。主体的・意図的に行なわれる取引が変化することで通貨の超過需給が発生し、為替レートが変動する。そして、受動的な取引が行なわれることによって国際収支全体の収支差がゼロになるのである。

 問題は、何が主体的・意図的な取引で、何が受動的な取引かだ。

 為替取引に「実需原則」の制約がなされており、資本移動に制約があった時代には、経常収支黒字の増減が為替レートを決める主要な要因になると考えてよかった。経常収支の黒字が増大すれば、円に対する需要が増大するから、円高になる。そして、黒字の額だけ海外への貸付や投資が受動的になされる。つまり、この時代には、主体的・能動的に行なわれるのは経常取引であり、資本取引(少なくとも、直接投資以外の取引)は経常収支の結果として受動的・反射的になされるだけだと考えることができたのである。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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