
日本の半導体復活を託されたラピダスは、需要の見通しがないまま巨大投資に踏み切ってしまった。日経新聞記者として半導体業界に詳しい筆者の見立てでは、このままでは「日の丸ファウンドリー」の成功は極めて怪しいという。日本には日本の強みを生かせる別の道があったにもかかわらず、戦略なき政治主導が道を誤らせた。いま求められているのは、現実に即した勝てるビジネスモデルだ。エルピーダ社長を務めた故・坂本幸雄が語った、日本半導体の逆転の一手とは?※本稿は、小柳建彦『ニッポン半導体復活の条件 異能の経営者 坂本幸雄の遺訓』の一部を抜粋・編集したものです。
安易な「垂直統合」モデル放棄が
日本半導体を沈めてしまった
微細加工技術とその量産化能力で韓国・台湾・日本が米国に対して優位性を持つという事実は、日本の半導体業界にあることを暗示している。
ニッポン半導体の凋落の大きな要因は、設計と製造を別々の企業が分担する分業モデルの波に乗り遅れことだと長年語られてきた。しかし、日本的雇用慣行、日本人の製造現場での「カイゼン(編集部注/トヨタが考案した業務改善手法。ムダを排除し、より効率的で生産性の高い状態を目指す)」の得意さ、などを考えると、製造プロセス技術を強みにできるIDM(設計から製造まで自社で手掛ける半導体事業)モデルを追求しながら的を絞った製品戦略を築いていれば、日本の半導体産業にはまた別の道が開けたのではないかという「たられば」の可能性だ。