激変!エネルギー最新事情
【第18回】 2018年9月28日
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ダイヤモンド・オンライン編集部
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「原油100ドル超え」はあるか?先高観に覆われる相場の正体

 一方、生産した原油を輸送するパイプラインの能力には限界がある。たとえば、パーミヤンで開発される原油は日量約350万バレルで、これはパイプラインで運べる量とほぼ同じ。たとえ増産が可能でもこれ以上の市場供給は難しいことがわかる。タンクローリーや鉄道などの代替手段で運ぶこともできるが、コストが高くつく。こうした採算性の問題により、足もとのシェール勢には増産を見合わせるトレンドが強い。主要なパイプラインの増強が行われるにしても、早くて来年半ば以降の見込みという。それから増産が始まるとしたら、原油市場でのインパクトは向こう1年ほどは小さいだろう。

原油価格が暴騰していた時代と
足もとの「決定的な違い」とは

 さて、そうなると原油市場はいったいどこへ向かうのだろうか。ここまで見て来た状況を考えると、今後、価格が大きく上ぶれする可能性は否定できない。現状を過去の原油高騰時になぞらえて、危ぶむ向きもある。

 しかし、「原油価格が100ドルを大きく超えた時代と現在とでは、状況が違う」と、大越エコノミストは指摘する。以前の高騰は、新興国の旺盛な需要や世界的な金融緩和の中で、投機マネーの市場への流入を主因として起きた異常なケースだった。それに対して現在の市場は、おおむね現実的な需給を反映しながら推移している。緩んだ市場がOPECの協調減産などによって引き締まる過程で、突発的に発生したイラン・ベネズエラ問題という不確定要素が価格を押し上げているのだ。そうなると今後の需給は、短期要因と中期要因の2段階で考えるほうがわかりやすい。

 まずは、不確定要素が演出する短期的な需給動向だが、先行きはトランプ大統領の出方にかかっていると言えよう。

 トランプはこの10月と11月に、約1100万バレルの戦略石油備蓄(SPR)を取り崩し、市場へ放出すると表明した。原油に連動して上昇を続けるガソリン価格は、消費が鈍ると言われる1ガロンあたり3ドルに達する勢いだ。11月の中間選挙を控え、国民の反発で支持基盤を弱めたくないトランプの思惑が見える。しかし、やはり支持基盤の一部を占める石油企業への配慮もあって、手始めに放出するのは日量で18万バレル程度の予定。一時的な鎮静効果はあっても、イランやベネズエラで見込まれる水準の減産が起きれば到底追いつかず、さらなる放出を迫られるだろう。

 また、危機感を募らせたトランプは、9月下旬、OPEC産油国に対して原油増産による価格の引き下げを求めたが、これを拒否されている。それを受け、原油価格は一時80ドル台まで急伸してしまった。

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原子力発電所の再稼働のメドが立たない今、エネルギーの安定的な確保ができるかは国民生活にとって非常に重要な意味を持つ。国内ではスマートコミュニティや大型蓄電池、太陽光発電に代表される再生可能エネルギー、地熱発電、メタンハイドレートなど、さまざまなエネルギー源の実用化へ検討が進められている。エネルギーに関する最新事情をレポートする。

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