激変!エネルギー最新事情
【第8回】 2015年9月25日
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ダイヤモンド・オンライン編集部
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商社の再エネビジネスは地元と二人三脚
丸紅が「小水力発電」に託した大きな夢

 本当に発電所なのか――。

 「それ」を初めて見たときに抱いた、率直な感想だ。

 約150年前の戊辰戦争において、新政府軍と旧幕臣の激戦が繰り広げられた福島県会津若松市。白虎隊の悲劇やNHK大河ドラマ『八重の桜』の舞台として名高く、訪れる人が絶えない観光地だ。そんな会津若松から在来線で40分ほど山間に入ったところに、南会津郡下郷町という温泉郷がある。最近、この町に再生可能エネルギー開発の先端を行く施設ができたことを知る人は、まだ少ないだろう。

 その施設とは、総合商社の丸紅が手がけ、今年4月に運転を開始したばかりの小水力発電所「花の郷(はなのさと)発電所」である。小水力発電とは農業用水や河川の高低(落差)を利用する、出力1000kW以下の小規模な水力発電のことだ。

1LDK程度のスペースで驚きの発電力
会津の山間に佇む「小水力発電所」

福島県下郷町の山間部にある「花の郷小水力発電所」。一見すると小さな山小屋のようだ。すぐ脇にある電柱から、周辺の民家へ直接電気を供給しているという。ここで、本当に新エネルギーに関する先進的な取り組みが行われているのか

 水力発電といっても、その印象は我々がすぐに思い浮かべるダムのような派手なものからはほど遠い。発電所を実際に見ると、外観は1LDKのマンションの部屋程度の広さしかなく、山小屋のようだ。しかし、これが思いのほか「いい仕事」をする。発電の仕組みは、阿賀川水系大沢川の農業用水路から取水し、直径約80cmのFRPM管(強化プラスチック製の水圧管)で水を下流へ約1.2km運び、約40mの落差を利用して管で水を落下させ、崖下にある発電所内の水車・発電機を回し、発電するというシンプルなもの。これだけで最大出力(認可出力)約175kW、年間発電電力量100万kWhを実現し、周辺の一般家庭約300戸分の電気をつくり出せるというのだ。

写真(上)大沢川の農業用水路から水を取り込む取水口の様子。ここで落ち葉・小枝などのゴミを取り除く。(中上)取水した水を運ぶ水圧管の断面。道路の埋設部にはFRPM管、露出部にはハウエル管が使われている。(中下)約40mの落差を利用して発電所まで管で水を落下させ、発電に使う。(下)発電に使った水は、発電所脇の水路から大沢川へ戻される

 再生可能エネルギーというだけあって、小水力発電のウリはC02を排出しないクリーンさをはじめ、徹底した環境への気遣いにある。花の郷発電所の場合、水圧管路は道路に埋設しており、発電所は茶色の山小屋風のつくりにしているため、景観を損ねない。発電設備は小型なので、音が静かで近隣に騒音をまき散らすこともない。さらに、発電に使った水は発電所の脇から再び大沢川に放水するため、下流への影響を与えない。発電所でつくられた電気は、発電所のすぐ脇に設置された電柱から直接周辺の民家に送られる。

 このように環境負荷を極力低減し、エネルギーの「地産地消」を実践しているのだ。近隣の道の駅「三彩館」に常備された水力発電の仕組みがわかる学習施設によって、住民に対する環境学習も行われている。こうした再生可能エネルギーへの取り組みが、原発事故で揺れた福島県の地方自治体で進められているという事実は、感慨深い。

 「そもそも花の郷発電所のプロジェクトが持ち上がった背景には、ちょっとしたドラマがあったんです」と語るのは、このプロジェクトをリードする丸紅の大西英一・電力本部国内電力プロジェクト部部長代理だ。ことの発端は、小水力発電を手がける丸紅の噂を聞き、下郷町の前町長が相談を持ちかけたことだった。2011年3月に発生した東日本大震災で、同町は地震や原発事故の影響を全く受けなかったにもかかわらず、風評被害で観光客が激減。事態を打開すべく町長が考えたのが、水がきれいな会津地方の魅力を世間にアピールするため、クリーンエネルギーの拠点を町内につくりたいというものだった。

 「水力発電で町の電気を全部賄えるくらい、本格的にやってくれないか」という熱心な相談に心を打たれた大西氏は、全く土地勘のなかった場所にもかかわらず現地調査に乗り出し、発電所の設置を決めたのだ。

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原子力発電所の再稼働のメドが立たない今、エネルギーの安定的な確保ができるかは国民生活にとって非常に重要な意味を持つ。国内ではスマートコミュニティや大型蓄電池、太陽光発電に代表される再生可能エネルギー、地熱発電、メタンハイドレートなど、さまざまなエネルギー源の実用化へ検討が進められている。エネルギーに関する最新事情をレポートする。

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