激変!エネルギー最新事情
【第18回】 2018年9月28日
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ダイヤモンド・オンライン編集部
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「原油100ドル超え」はあるか?先高観に覆われる相場の正体

 まさに待ったなしの状況なのだが、こうなると予測できないのが「トランプ流」。強硬路線から融和路線へと転換し、二度目の首脳会談を目論む北朝鮮との「ディール外交」で見せたように、実利をとってイランへの制裁を緩和する可能性もある。前出の石油元売り企業の関係者は、「同業者の間でもそのような見方は少なくない」と語る。そうなれば、原油需給は一転して緩み始めるだろう。

 むろん、選挙が終わってしまえば原油市場への興味を失い、自ら「原油の独占組織」と批難するOPECに責任をなすりつけ、放り出すというリスクもあるが――。果たしてどうなるだろうか。

ボトルネックと一時的なリスクが
複合的に顕在化した状態か

 次に、中期にわたる需給動向だ。需要面で見ると、2013年以降、世界の実質経済成長率とそれに連動する原油価格は、比較的安定して推移している。IEA(国際エネルギー機関)や野村證券の見通しによると、成長率の伸び率は毎年1%程度で、原油需要は2013年以降の平均で毎年日量150万バレル程度伸びていく。このペースだと、今後も需給は引き締まり気味で推移しそうだという。

 EV(電気自動車)やスマートエネルギーへのシフトはまだ道半ばであり、原油需要が伸び続けるトレンドはしばらく変わらないだろう。そこで、もしもインドなどの新興国需要が急激に立ち上がるようなことがあれば、価格は上ブレしそうだ。「大幅な省原油化が進むか、世界経済が大きく落ち込まない限り、原油の需要は増え続ける」(大越エコノミスト)。

 一方で供給面を見ると、最も増産を期待できる米国シェール勢が、パイプラインの整備や生産効率の改善を経て、これから原油供給を本格的に増やしてくるはずだ。原油価格の高止まりは、彼らに加えて、カナダのサンドオイルや海底油田の開発も後押しする。それは将来の供給増へとつながり、結果的に原油需給を今より緩和させる効果がある。

 このように考えると、折からの価格高騰は、供給サイドの新たなプレーヤーが目覚める前のアクシデントよってもたらされたとも言える。言うなれば、ボトルネックと一時的なリスク要因が複合的に顕在化した状態だろうか。ならば、これから一過性の価格高騰はあったとしても、相場水準が大きく切り上がることは考えづらいかもしれない。先行きは依然として不透明だが、目先の価格上昇が一旦どこで落ち着くのかを、冷静に見守りたい。

 ガソリンや灯油が値上がりして生活が苦しくなる――。我々が日々感じているリスクは、こうした想像もつかないほど巨大なグローバル市場の思惑によってもたらされているのだ。

(ダイヤモンド・オンライン編集部 小尾拓也)

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原子力発電所の再稼働のメドが立たない今、エネルギーの安定的な確保ができるかは国民生活にとって非常に重要な意味を持つ。国内ではスマートコミュニティや大型蓄電池、太陽光発電に代表される再生可能エネルギー、地熱発電、メタンハイドレートなど、さまざまなエネルギー源の実用化へ検討が進められている。エネルギーに関する最新事情をレポートする。

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