週刊ダイヤモンド9月29日号は「乗り遅れるな! キャッシュレス」。この1年、街中では急速にキャッシュレスが進んでおり、銀行やカード会社、IT企業は相次いで新規参入したり事業の拡充に乗り出している。特集では新興勢力主要5社の事業部門トップにインタビューを敢行した。ダイヤモンド・オンラインで、彼らの思惑と意気込み、戦略を特別公開する。

キャッシュレス決済で
パワーゲームが始まる

 「もはや決済だけではもうからない構造になっている」。メルカリの金融事業を展開するメルペイの青柳直樹社長はそう認める。それにもかかわらず、彼ら新興勢は、なぜ決済事業に参入するのか。

 彼らの狙いは共通している。一口に言えば、自社で築き上げてきた「経済圏」の拡大だ。

 下図で示したように、新興勢はそれぞれ、すでに数千万人単位の会員を抱えており、各社はさまざまなサービスを提供することで会員を囲い込み、自社の経済圏にお金が落ちるようにしている。

 例えば楽天は、楽天市場で買い物をするとポイントがたまる。支払いに楽天カードを使えば、ポイントが加算され、たまったポイントを楽天市場で使うと、またポイントがたまる。こうやって「楽天経済圏」に会員を囲い込んでいるのだ。楽天ペイは、ためたポイントをいつでもリアル店舗で使えるようにすることで、ネットの世界に限られていた経済圏を、リアルの世界へと拡大する役割を担っている。

 経済圏が広がれば、会員が増えるだけでなく、さまざまなサービスを通じて会員にアプローチすることが可能になり、収益を上げるチャンスが広がる。決済事業単体でもうからなくても、トータルでもうかればいいという戦略だ。