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経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”

JAL中期再生プランの実現性を危ぶむ“利益操作”のツケ

町田 徹 [ジャーナリスト]
【第19回】 2008年3月7日
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 経営再建中の日本航空(JAL)が2月末、営業利益を3年後の2010年度に960億円に拡大する「2008-2010年度JALグループ再生中期プラン」を公表し、ビジネス界にちょっとした驚きを与えた。実現すれば、ライバルの全日本空輸(ANA)のそれ(900億円)を追い越すことになるからだ。だが、このところ、同社は公表した計画を達成できない失態を繰り返している。今なお、同社には、航空機購入のリベートを利益に計上して実態より経営を良好にみせかけてきたツケをはじめ、看過できないリスクが山積みだ。

 「2010年度以降の羽田・成田空港の拡張・発着枠拡大という航空業界におけるビジネスチャンスに向け、安定的成長軌道を確立する」

 「燃費価格の高騰や各事業分野における競争激化などの変化に対応する」

 「財務体質を強化し、機材更新やお客様の快適性・利便性を向上する設備投資を積極的に推進する」

 JALが先月29日に公表した再生中期プランには、こうした立派な言葉が溢れている。描き出された将来像も薔薇色だ。向こう3年間、JALは増収増益を続け、2010年度に営業収益2兆2600億円、営業利益960億円、経常利益740億円という収益を稼ぎ出すという。この水準を達成できれば、ライバルの全日空を抜き去り、営業収益で6000億円、営業利益で60億円、経常利益で220億円、それぞれ上回ることができる。計画を見る限り、2期連続の最終赤字という経営危機に喘いできた、JALの姿は存在しない。

 驚くほど野心的な計画に対する航空アナリストたちの衝撃が伝染したのだろうか。計画公表後、最初の立ち合いとなった3月3日、東京証券取引所では、JAL株が前週末より3円も高い262円で寄り付いた。この日は、サブプライムローン問題や米経済に対する不信が再燃し、東京市場が朝方から急落した日である。日経平均株価は終値で前週末比610円84銭安の1万2992円18銭に落ち込んだ。そんな中で、JAL株だけは、寄り付きから力強い動きを見せたのだ。

 だが、JALの再生計画には、いったいどれぐらいの実現性があるのだろうか。

“リベート”を営業外利益に
計上してきた日本の航空業界

 大きな影を落とすのが、一般には聞き慣れない「機材関連報奨額」という会計科目とその過去の計上方法の問題だ。「機材関連報奨額」とは、航空機やエンジン、その他の航空機部品を購入する際に、ロッキードやエアバスといった航空機メーカーから、日本の航空会社が受け取るリベートのことを指す。

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町田徹 [ジャーナリスト]

1960年大阪府生まれ。神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒。日本経済新聞社に入社後、記者としてリクルート事件など数々のスクープを連発。日経時代に米ペンシルバニア大学ウォートンスクールに社費留学。同社を退社後、雑誌「選択」編集者を経て独立。日興コーディアルグループの粉飾決算をスクープして、06年度の「雑誌ジャーナリズム賞 大賞」を受賞。「日本郵政-解き放たれた「巨人」「巨大独占NTTの宿罪」など著書多数。


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