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西沢和彦の「税と社会保障抜本改革」入門

給付付き税額控除(上)
同税制の議論なき一体改革は
画竜点睛を欠く

西沢和彦 [日本総合研究所調査部上席主任研究員]
【第14回】 2012年5月8日
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前回まで消費税を採り上げた。消費税に関し、今回の社会保障・税一体改革においては、その使途に論点が偏り、医療に対する非課税問題など税目としての議論が不足していることを指摘した。税制に関しては、真に社会保障・税一体改革であるならば中核的テーマとなるはずの給付付き税額控除も、具体的な議論を全くみることができない。給付付き税額控除は、貧困対策、就労促進、財政健全化、行政改革、国民の利便性向上などまさに一石五鳥あるいはそれ以上の可能性を秘めている。そこで今回と次回は給付付き税額控除を採り上げる。

 給付付き税額控除とは、おおまかにいえば、個人所得税制(以下、所得税制)を通じて、税負担の調整のみならず、低所得層に対する現金給付まで行う政策ツールである。所得税制を「徴税」だけでなく「給付」にも用いるものであり、税制が社会保障の機能を包摂した仕組みといえる。以下では、その特徴のうち次の3点に着目し、それぞれ掘り下げていく。そのことによって、給付付き税額控除のメリットが、よりクリアに浮かび上がってくるからである。

1.その名の通り、所得控除ではなく税額控除であり、しかも給付付きである。
2.個人への直接的な現金給付である。
3.社会保障制度ではなく税制を通じた給付である。

税額控除しかも給付付きとは
どういうことか

 第1に、給付付き税額控除は、その名の通り、税額控除でありしかも給付付きであるということである。控除とは、ある金額から一定の金額を差し引くことを言うが、そもそも所得税の納付税額を算出するプロセスにおいて、税負担を軽減する控除形式の種類としては、大きく所得控除と税額控除の2つがある(次ページ図表1参照)。

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西沢和彦 [日本総合研究所調査部上席主任研究員]

ニシザワ カズヒコ/1989年3月一橋大学社会学部卒業、同年年4月 三井銀行入行、98年より現職。2002年年3月法政大学修士(経済学)。主な著書に『税と社会保障の抜本改革』(日本経済新聞出版社、11年6月)『年金制度は誰のものか』(日本経済新聞出版社08年4月、第51回日経・経済図書文化賞) など。(現在の公職)社会保障審議会日本年金機構評価部会委員、社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会委員。


西沢和彦の「税と社会保障抜本改革」入門

増加する社会保障費の財源確保に向けて、政府は消費税引き上げの議論を本格化させている。だが、社会保障をめぐる議論は複雑かつ専門的で、国民は改革の是非を判断できない状態に置かれている。社会保障の専門家として名高い日本総研の西沢和彦主任研究員が、年金をはじめとする社会保障制度の仕組みと問題点を、できるだけ平易に解説し、ひとりひとりがこの問題を考える材料を提供する。

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