竜巻をハカる。F2のFは藤田のF

 大型連休の最終日5月6日の昼すぎに、茨城県と栃木県にまたがって複数の強い竜巻が発生し、2000棟を超える家屋が損壊、森林や農産物・工業品にも10億円近い被害がでました。負傷者は数十名に上り、自宅にいた中学生の男の子が崩れた屋根の下敷きになって亡くなりました。

 死者を伴う国内の竜巻被害はこの10年で4件目。今回の竜巻は、被害家屋の多さでは2006年9月17日に宮崎県延岡市を襲い、停止中の特急列車を脱線・転覆させた竜巻に匹敵するものでした。

 気象庁が発表したこの竜巻の強さはF2。「屋根がはぎ取られる」強さの竜巻です。

 推定される風速は7秒間の平均で推定秒速50~69m(*1)。時速になおせば時速180~248km。吹き飛ばされた木材が、このスピードで木造家屋に垂直にぶつかれば、壁をらくらくと貫通し家自体を串刺しにしかねない風速なのです。

 でもF2クラスの竜巻は、実はほぼ毎年発生しています。そのF2の1つ上がF3。国内では過去30年で3件(*2)しか観測されていません。

 世界中で竜巻の規模を示す尺度として使われているこの「F」は、日本人気象学者 藤田哲也博士が提唱した「藤田スケール(F-Scale)」のFです。

*1 これは藤田スケールによるもの。2007年から米国で採用された改良藤田スケール(EF)で、EF2なら秒速50~60mである。
*2 千葉県茂原市(1990年12月11日)、愛知県豊橋市(1999年9月24日)、北海道佐呂間町(2006年9月17日)。茂原市では同時にミカン大の雹(ひょう)が降った。