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出口治明の提言:日本の優先順位

放棄された郵政完全民営化路線
小泉改革とはいったい何だったのか

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第48回】 2012年5月15日
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 4月27日、与野党の合意の下に改正郵政民営化法が成立し、小泉郵政改革は、その終焉を迎えたように思われる。なぜかと言えば、改革の中心であったゆうちょ銀行(以下「ゆうちょ」)とかんぽ生命保険(以下「かんぽ」)の完全民営化路線が、ほぼ放棄されたように見えるからである。

 これに対して、自民党の4人の衆議院議員が造反したが、2005年9月の総選挙で郵政改革を「唯一の」旗印にして、296議席を獲得し圧勝した自民党の姿は、今でも鮮明に脳裡に焼きついている。296人対4人、いくら7年の歳月が経過しているとは言え、この著しい落差に驚嘆を禁じ得ないのは筆者だけだろうか。小泉郵政改革とは、いったい何だったのだろうか。もう一度、原点から考察してみたい。

金融自由化路線の
残された最後の環が郵政改革

 戦後のわが国の金融界は、1940年体制の世界と、金融自由化の世界に大別される。第二次世界大戦での敗戦により、焦土と化したわが国を復興するためには、まず資本の蓄積が何よりも必要であった。わが国は、当時の大蔵省による金融の一元指導により、資本の早期蓄積を目指した。それが、1940年体制であり、一言で言えば、統制経済、社会主義的な金融の枠組みであった。そして、この1940年体制は大成功を収め、わが国はGDP世界第2の大国まで登り詰めたのである。

 1980年代に入って、わが国は外為法の改正を皮切りに、金融自由化路線に舵を切り替えた。世界第2の規模にまで成長したわが国経済にとって、1940年体制は、もはや桎梏でしかなく、金融の自由化こそが、これからの成長を加速すると考えられたからである。為替の自由化、金融制度改革、金融ビッグバン等の諸施策は、すべてその大きな流れに沿うものであった。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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