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金融市場異論百出

大震災後のキーワード「絆」が
中国で理解されない理由

加藤 出 [東短リサーチ取締役]
2012年5月16日
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 昨年の大震災以降のキーワードとして、多くの日本人は「絆」という言葉を非常に大事にしている。筆者が出張時に会う海外の金融センターで働いている日本人には、その傾向がより強いように思われる。大震災後に日本で被災者を手助けできなかったことを気にしている真面目な人ほど、「絆」の尊さを重視している。

 先日、中国上海のある日系大手企業の総経理(社長)に興味深い話を聞いた。旧正月明けの社内の年頭あいさつで、同氏は、日本の震災後の「絆」の尊さに触れつつ、日本人と中国人との間でも「絆」を大事にしながらビジネスを今年もがんばっていこう、とスピーチしようとした。事前に、中国人スタッフに中国語訳を頼んだところ、彼女は原稿に出てくる「絆」の意味が理解できないとの困惑を見せた。嫌な予感がした同氏が中日辞書を開いたところ、中国語における「絆」の意味が全く異なることに気付き、冷や汗が出たという。

 「中日大辞典」(大修館)には、「絆」(ban)は主に動詞として、次のように解説されている。(1)(足を)すくう、(わななどに)ひっかける(かかる)。(2)じゃま(妨げ)になる、まつわりつく。(3)きずな、拘束。(4)わな。(3)に「きずな」という意味がかろうじて載っているが、ニュアンスとしては、日本語の「しがらみ」に近い。複数の中国人に聞いてみたが、皆、中国語の「絆」にポジティブなニュアンスはないと言っていた。

 ウェブサイトの日本語「語源由来辞典」を見ると、「絆」は犬や馬など動物をつなぎ留めておく綱を由来にする言葉で、平安中期の辞書「和名抄」にはその用法で出てくる。一方、中国語の「絆」も昔はそれに近い意味を持っていて、馬が逃げないように引っかける綱などを意味していた。しかし、その後長い時を経て両国における意味は大きく変容した。

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加藤 出 [東短リサーチ取締役]

東短リサーチ取締役チーフエコノミスト。1988年4月東京短資(株)入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを 2001年まで兼務。2002年2月より現職。 2002年に米国ニューヨークの大和総研アメリカ、ライトソンICAP(Fedウォッチ・シンクタンク)にて客員研究員。マネーマーケットの現場の視点から各国の金融政策を分析している。2007~2008年度、東京理科大学経営学部非常勤講師。2009年度中央大学商学部兼任講師。著書に「日銀は死んだのか?」(日本経済新聞社、2001年)、「新東京マネーマーケット」(有斐閣、共著、2002年)、「メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場」(ダイヤモンド社、2004年)、「バーナンキのFRB」(ダイヤモンド社、共著、2006年)。


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