インフルエンザの流行Photo:PIXTA

 インフルエンザの流行が始まっている。ワクチン接種は11月中に済ませるのが理想的だ。2回接種をするなら2~3週間ほど間隔を空け、12月中に2回目を接種するといい。

 大人でも注射は嫌なものだ。インフルエンザワクチンは筋注で、正直に言えば痛い。国内でも負担が少ない「点鼻ワクチン」や「貼るワクチン」が開発中だが、実用化までに数年は必要だろう。

 欧米では、すでに点鼻ワクチン「FluMist」が使用されている。日本でも利用できるが、国内では未承認なので、万が一、何かがあっても被害者救済制度の対象にはならない。医師と相談して慎重に判断してほしい。

 用心しても感染した場合は、潔く自らを「自主隔離」し、水分をこまめに摂って脱水症状を防ぎつつ、安静にすることが大切だ。

 薬物療法では、おなじみのノイラミニダーゼ阻害薬(製品名タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ)が主力。この4剤は、細胞内で増殖したウイルスが細胞外に広がるのを防ぐ働きがある。

 さらに今年2月、新しいメカニズムを持つ「バロキサビル マルボキシル(製品名ゾフルーザ)」が承認された。

 同剤はウイルスの増殖そのものを抑える働きがあり、最初に感染したウイルスも速やかに消失していく。臨床試験の結果をみると、症状が出ている期間の短縮効果は既存薬と同程度だったが、ウイルスが体内から排出されるまでの時間は既存薬よりも早かった。

 つまり、他人にウイルスをまき散らす「感染源」の時期を短縮し、大流行を防ぐ可能性があるわけだ。

 1回だけ薬を飲めば治療が済むのもメリットだ。12歳以上の患者は20mg錠を1回2錠(顆粒は4包)、体重が80kg以上の患者は同1回4錠(同8包)で終了。手軽さが受け、既にトップシェアだ。ちなみに、12歳未満の小児は体重によって用量が異なる。間違っても、自分に処方された薬を安易に分けたりしないこと。

 副作用は下痢、頭痛など。タミフルで話題になった「異常行動」については、これまでのところ報告はされていない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)