中国製のリチウムイオン電池

週刊ダイヤモンド2018年11月24日号第1特集は「米中戦争 日系メーカー危険度ランキング」です。米中の技術覇権、軍事覇権を懸けた戦いは、長期戦になることが決定的です。日本企業にはどう影響するのでしょうか。特集ではトヨタをはじめとした自動車産業に対する影響を調査し、記事にまとめました。その中から、リチウムイオン電池に関するレポートを、ダイヤモンド・オンラインに特別公開します。

重大決断を迫られている
リチウム電池の4部材メーカー

「もはや中国製のリチウムイオン電池(LIB)を無視することはできない」(日本のLIB業界関係者)

 パリ協定から離脱し、地球温暖化対策に消極的な米国とは対照的に、中国は環境対策と製造業の付加価値向上を両立させる電気自動車(EV)産業の育成へ突き進む。

 中国を警戒し、米国が規制を強化しようとする“技術リスト”に先進バッテリー技術は含まれる。だがLIB産業では中国が圧倒的優位な立場を築きつつある。米国には良くも悪くも話題性のあるテスラがあるが、LIB世界市場の規模からすれば取るに足りず、LIB産業の中国優勢は変わらない。

 とりわけ、2017年に出荷量でパナソニックを抜き、世界首位に躍り出た中国・寧徳時代新能源科技(CATL)の躍進は著しい。独フォルクスワーゲンがCATL製電池の採用を決めたことで、業界地図が大きく動いた。

 中国勢はLIBの原料の囲い込みにも積極的だ。特にコバルトやニッケルはレアメタルだけに、EVの拡大に伴って奪い合いが必至。「中国政府は国策としてEV産業をバックアップする」(湯進・みずほ銀行国際営業部主任研究員)というように、国ぐるみの資源投資にも余念がない。

 中国が世界一へひた走る中、重大な決断を迫られているのが日本の4部材メーカーだ。4部材とは、前出のレアメタルを原料とする正極材を筆頭に、負極材、セパレーター、電解液から成るLIBの主要材料のことで、日本勢が世界一の技術を持つといわれてきた。