2016年と今年の2回にわたり、金融専門誌ユーロマネーから「世界最高のデジタルバンク」の表彰を受けたシンガポール最大手のDBS銀行。伝統的な銀行業のデジタル化のみならず、最近では“脱銀行”を掲げて自動車や不動産の売買仲介など全くの異分野にまで乗り出している。彼らの何がすごいのか、どんな未来像を描いているのか。インド人トップのピユシュ・グプタ氏のインタビューと共にレポートする。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平、鈴木崇久)

DBSの年次報告書DBSの2017年アニュアルレポート。表紙に同社の意志が表れている。

 邦銀が今、課題とする銀行業のデジタル化において、世界トップを走る銀行がシンガポールにある。同国最大手のDBS銀行だ。金融専門誌「ユーロマネー」から2年前、アジアの銀行で初めて「世界最高のデジタルバンク」の表彰を受け、今夏には2度目の受賞も果たした。

 そんなDBSがデジタル化の取り組みを重視している様は、2017年のアニュアルレポート(年次報告書)の表紙を見れば明らかだ。

 シンガポール政府により、国の開発の融資機関として1968年に設立されたDBS。元来の略称は「Development Bank of Singapore」だが、この表紙ではあえて頭文字の「D」を「Digital」とし、この方針が今後も揺るぎないとの意志をにじませている。

背景に既存の銀行業への危機感

 背景には、既存の銀行業への危機感がある。業績こそ堅調だが、中国通販大手アリババ集団が決済機能を充実させるなど、異業種からの侵食が脅威と化しているのだ。邦銀も置かれた環境は同じだが、金融当局の規制が日本より柔軟なこともあり、変化のスピード感が異なっている。

 では、DBSが数年前から力を入れるデジタル化は、収益面でどんな影響を与えているのか。アニュアルレポートには次ページの図の通り、銀行としては珍しくも思える内容が開示されている。