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日立に電力事業を売却する
ABBのトップが語る企業改革への挑戦

末岡洋子
2018年12月27日
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日立製作所へ送配電会社を売却することが2018年末に明らかになったABBは、スイスを拠点とする産業機器メーカーだ。2017年度の売上高は前年比1%増の343億1200万ドル、5年前にCEOに就任したUlrich Spiesshofer氏は「デジタルを差別化にすべく変革中」という。Spiesshofer氏が、2018年秋にSalesforceのイベントで同社の共同創業者兼CEOのMarc Benioff氏に語った、ABBの変革と組織戦略についてまとめる。

デジタルで差別化を図る

Salesforceの年次イベントで同社CEO共同創業者のMarc Benioff氏(右)と対談する、ABB CEOのSpiesshofer氏(左)

 ABBはモーター、産業ロボット、太陽光発電や電気自動車向け部品などの産業機器を手掛ける技術企業。スウェーデンのASEA(Allmänna Svenska Elektriska Aktiebolaget)とスイスのBBC(Brown, Boveri & Cie)が1988年に合併し、ABBという社名で再出発したが、前身となるスウェーデンElektriska Aktiebolaget社(その後のASEA)の創業からは130年以上が経過している古参の技術企業だ。現在、世界100ヵ国に拠点を持ち、従業員は14万7000人を数える。

 Spiesshofer氏は2013年9月にCEO就任以来、社内の変革を進めてきたが、中心となるのはデジタルだ。「銅や鉄でできたモーターや変圧器といった製品で差別化する企業から、デジタル製品を土台に差別化する企業に変革を図っている」。Salesforceとは、同社のSales Cloud、Service CloudなどのSaaSを、AI機能のEinsteinとともに用いているほか、SalesforceのIoTソリューションを利用して、顧客に納入済みのABB製品よりデータを収集して予測メンテナンスなどのサービスに活用する「ABB Ability」なども展開している。

オーケストラの指揮をするロボットの「YuMi」

 ABBの変革を最も象徴しているのが、産業ロボット「YuMi」だ。双腕型ロボットで、針に糸を通すことができるという精密な作業を得意とする。人間と一緒に作業する「協働」をうたっており、その能力を示したのがイタリアのルッカ・フィルハーモニー交響楽団での指揮だ。同オーケストラの指揮者の動きを教え込んで、オーケストラの演奏に合わせてテノール歌手Andrea Bocelli氏が歌う歌曲を見事に指揮した。トレーニングに要した時間は17時間、自身もクラリネットやサックスなど楽器を操るアマチュアミュージシャンというSpiesshofer氏によると、「17時間でオペラの指揮ができるというのは不可能」なレベルだという。(ABBのYumiの動画はこちら

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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