ジャーナリスト・上杉隆氏の新刊『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)が話題を呼んでいる。大新聞、テレビなど巨大報道機関に巣食う歪んだ構造に鋭くメスをいれ、ジャーナリズムのあるべき姿を問う渾身のノンフィクションだ。かつてないマスコミ不信の高まりで、報道への信頼が揺らぐ中、メディアはどこへ向かうのか。上杉氏が語った。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長 田上雄司)

上杉隆
上杉隆 1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。NHK報道局勤務、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。ダイヤモンド・オンラインで「週刊・上杉隆」を連載中。

―メディアをテーマにした本はヒットしづらいと言われますが、今回はかなり好調です。

 立花隆氏が『ジャーナリズムを考える旅』(のち『アメリカジャーナリズム報告』に改題)を出したのが1978年。田勢康弘氏の『政治ジャーナリズムの罪と罰』が94年、岩瀬達哉氏が『新聞が面白くない理由』を書き出したのが97年です。いずれも当時の日本にまだインターネットは登場していませんでした。しかし今では、ネットを通じてメディアへの不信が社会全体に広がっています。メディア業界の不祥事も、ここ4、5年次々に明らかになっている。この本が、世間のメディア不信を代弁する形になったのかもしれません。

―記者クラブの閉鎖性など、日本のマスコミに対して辛らつな批判、問題提起をしています。

 前作『官邸崩壊』(新潮社)とは逆で、今回は政治家からの反応がいい(笑)。地方の新聞やテレビ記者、記者クラブに入れない雑誌や情報番組の制作スタッフなど大新聞以外のマスコミ人からは、溜飲を下げたという声を聞きます。全国紙に関しては、とくに上層部の人たちが頭に来ているようです。ただ、現状に疑問を抱いている若手層からは割と支持を得ているようです。

―記者クラブの壁は、普段の取材活動の中でも感じますか。

 すべての取材において感じますね。フリーの立場の私の場合、議員会館に入って政治家に会うまでに相当な時間がかかる。受付で氏名、住所、理由などを書いて、ボディチェックを受けてようやく面会票が発行されても、ルール上では1つの事務所しか行けない。国会の場合は秘書用の通行証を借りて入るが、通行証は1事務所1つしかないので、他に貸し出されていると取れないわけです。また、衆議院と参議院は別なので、衆議院の通行証で入ると、参議院に移動した時、たとえば一緒にいる議員や記者は移動できても、私だけが衛視に止められてしまうんです。するとまた、一旦国会を出て参議院の受付で申請することになる。毎日その繰り返しですから、それだけでも新聞記者に比べると明らかに不利です。