原発建設計画を主導してきた日立の中西宏明会長だが、18年12月以降、「もう限界だと英政府に伝えた」と会見で述べるなど、事業の中断を示唆する発言をしている原発建設計画を主導してきた日立の中西宏明会長だが、18年12月以降、「もう限界だと英政府に伝えた」と会見で述べるなど、事業の中断を示唆する発言をしている Photo by Hirobumi Senbongi

 日立製作所がグローバル化の拠点と位置付けてきた英国での事業に暗雲が垂れ込めている。英政府と進めてきた原発建設計画の続行を断念する他、昨年は鉄道車両事業でも政府の大型案件を逃した。良好だった英政府との関係が冷え込んでいると言わざるを得ない状況だ。

「英政府は間違いなく原発建設をやりたがっていた。しかし(原発で発電した電力を優遇価格で買い取る)価格が92ポンドならやれていた」。日立幹部は英政府との難交渉にほとほと疲れた様子でこう語った。

 それでも、原発計画から撤退するという経営判断は投資家から歓迎された。

 事業を中断すれば約3000億円もの損失が発生するというのに、撤退観測が報道された1月11日、日立株価は前日比8.6%上昇した。

 英政府は、原発計画を実現させるため総事業費3兆円のうち2兆円を融資する支援策を示していたが、国民からの反発を招きかねない高値での電力の買い取りには慎重だった。

 冒頭の日立幹部発言にある「92ポンド」とは、フランスや中国の企業が主体となる英国の原発計画で設定された1メガワット時当たりの買取価格だ。これが電力の市場価格の2倍の水準だったために英国内で政治問題化していた。

 ただでさえ政権基盤がぜい弱なメイ英政権が、原発計画で日立に譲歩できる余地は限られていた。