5月7日に発表された日立製作所の2009年3月期によると、連結最終損益が、製造業の赤字としては過去最大の7880億円になったことを発表しました。将来の収益から控除するために、税金の前払い分を繰り延べ税金資産に計上していましたが、将来の業績の回復に時間がかかるという判断で、その繰り延べ税金資産を取り崩し、2009年3月期の法人税の負担として損益計算書へ計上したことも大きく影響しています。しかし、本業の儲けである営業利益でも前期比63%減となっていますから、特殊要因ではなく本質的な業績悪化なのでしょう。

 上場企業の2009年3月期の決算発表の結果を見ていくと、日立製作所のように最終損益だけでなく、経常利益なども大幅減益に陥る企業が相次いでいます。ある程度は予想されていたとは言え、あらためて金融危機の影響が大きかったことが表れています。昨年から話題の派遣切り、労働分配率の低下という言葉で、企業を批判する論調がありましたが、ここまで減益が大きいことを目の当たりにすると、妙に納得してしまうのです。大変な思いをされている方には申し訳ないですが……。

製造業の高い減益率の
原因となる2つの指標

 4月末までに決算発表をした上場企業の業績下方修正に関して、ある特徴に気付きます。2009年3月期の全産業の経常利益の前期比増減率が52%に対して、製造業の経常利益は、前年比66%以上も減少するというのです。これに対して非製造業の前期比の経常減益予想は27%です。実は2月の段階で、非製造業の経常減益率は22%に対して、製造業は82%だったのです。

 この差に驚きませんか。製造業は海外依存度が高く、円高の影響も大きいという面もありますが、これらの差はどうして生まれるのでしょうか。損益構造の違いに目を向けると、差が生まれる本質的理由が見えてきます。これを考えてみましょう。

 この差は、2つの指標に原因があります。1つは、固定費の大きさです。

 固定費を2つに分類すると管理可能固定費と管理不能固定費に分けられます。管理可能固定費とは、広告宣伝費、交通費、通信費、交際費のような固定費です。売上高が下がったときには、比較的短時間で、その発生を回避することができる固定費です。経営者が決めれば、すぐにでも発生をゼロかそれに近い状態にコントロールできます。

 管理不能固定費の代表は、減価償却費とリース料、地代家賃などの設備費です。売上が急激に減少しても、管理不能固定費が多い会社は、すぐに固定費を減らすことができません。設備費が圧倒的に多いのは、工場などを多く持つ製造業です。

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千賀秀信

せんが・ひでのぶ 公認会計士、税理士専門の情報処理サービス業・株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。18年間勤務後、1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、企業経営と計数を結びつけた独自のマネジメント能力開発プログラムを構築。「わかりやすさと具体性」という点で、多くの企業担当者や受講生からよい評価を受けている。研修、コンサルティング、執筆などで活躍中。大前研一のアタッカーズ・ビジネススクール講師。著書に『新版・経営分析の基本がハッキリわかる本』(ダイヤモンド社)、『経営センスが高まる! 計数感覚がハッキリわかる本』(ダイヤモンド社)、『「ベンチャー起業」実戦教本』(プレジデント社:共著)、『会社数字がわかる計数感覚ドリル』(朝日新書)などがある。
●マネジメント能力開発研究所のホームページ
http://homepage3.nifty.com/maneji/


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