3月のロンドン・ケンブリッジでの「消費税」についての講演がdiscussion paperとして公開されることになった。正式に公開されるのは数日後だが、先行して紹介したい。今、旬なテーマであり、世界中からのアクセスを期待している。

 野田佳彦首相と小沢一郎民主党元代表が2度にわたって会談した。野田首相は、年金、医療など膨張する社会保障費を賄う安定財源確保のために増税が必要と訴えた。一方、小沢元代表は「反増税」の姿勢を崩さず、会談は平行線に終わった。野田首相は内閣改造で、参院で問責決議案を受けた田中直紀防衛相らを交代させた。党内融和よりも、自民党との連携を模索して法案成立を目指す路線に軸足を置き始めたようだ。

消費税への理解を広めた
財務省主税局の「竹下流」人間関係構築術

 野田首相は消費増税の今国会成立に「政治生命」をかけると訴えている。だが、消費増税そのものは、「政治生命」をかけるほど厳しい状況にあるわけではない。民主党と自民党は消費税率を10%とする方向で一致しているからだ(第30回を参照のこと)。国会で、与野党は激しい攻防を繰り広げているように見える。だが、突き詰めると「社会保障政策」のあり方を巡って対立しているのであって、消費増税は未だ無傷のままだ。また、財界、マスコミも消費増税が必要だと主張し続けている。

 一方、このような奇妙なまでに消費増税賛成のコンセンサスが出来上がっている状況を、「財務省の陰謀」だとする類の批判が巷に氾濫している。政策通として知られる、みんなの党・江田憲司幹事長氏までもが、著書で「財務省のマインドコントロール」だと論じているのだ。

 増税反対派が「陰謀論」を訴えたくなる気持ちも理解はできる。元々財務省と親密な自民党が増税賛成なのはわかるが、かつて財務省と対立関係にあった民主党までもが、増税実現に突き進んでいるからだ。「大蔵省解体論」を訴えた五十嵐文彦財務副大臣さえ、180度転向しているのだから、「マインドコントロール」だと言いたくもなる。