国会では消費増税を含む税制改革法案の審議が本格化している。もし、野田総理が「政治生命」をかけると明言する同法案が不成立となった場合、今後10年間で日本財政は相当厳しい局面に突入する可能性が高い。直面するのは、これから説明する3つのリスクである。

社会保障・税一体改革は一時の止血剤<br />日本財政に潜む3つのリスク<br />――一橋大学経済研究所准教授 小黒一正氏おぐろ かずまさ/1997年京都大学理学部卒、一橋大学博士(経済学)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、(財)世界平和研究所主任研究員などを経て、2010年8月より現職。内閣府・経済社会総合研究所客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー、内閣府・経済社会構造に関する有識者会議 制度・規範WG「世代会計専門チーム」メンバー。専門は公共経済学。著書に、『2020年、日本が破綻する日』、『日本破綻を防ぐ 2つのプラン』(共著)、『人口減少社会の社会保障制度改革の研究』(共著)などがある

 国際通貨基金(IMF)は、日本の地方も含む一般政府の債務残高(対GDP)は2012年には232%、2016年には277%に達すると予測し、『日本の公的債務残高は「持続不能な水準」に膨らんでいることから、「日本や世界経済安定のリスク」になっている』と警鐘を鳴らしている。

 このような中、5%の消費増税を含む税制改革法案の審議がスタートした。だが、デフレ脱却が進まない現状で増税に否定的な意見も多く、政府・与党は政権内のみでなく、野党との政治的駆け引きを含め、難しい舵取りが要求されている。

 野田総理は「政治生命」をかけ、税制改革法案を成立させようとしているが、もし同法案が不成立となった場合、今後10年間で日本財政は相当厳しい局面に突入する可能性が高い。その際、留意すべき要因は以下の3つである。①「改革先送りコスト」、②「利払い費の急増」、③「市場が抱く期待が変化するリスク」である。