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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

若者に投資しない社会は没落する
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト

熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
【第65回】 2012年6月6日
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 企業は、どんどん若い勤労世代に賃金分配をしなくなっている。20歳代以下の勤労者に配分した雇用者報酬総額は、1999年に55兆円だったと推計されるが、2011年には37兆円にまで減ってしまっている(▲39%減、図表1参照)。

 この間、雇用者報酬は、総額で▲9%ほど減額されているが、配分率自体も1999年の20.4%から、2011年の15.1%へと大幅低下している。

 このデータ解説を聞いて、若者の人数が減っているので、20歳代以下に配分した報酬額が減っていても仕方がないと考える人は多いだろう。本当にそう考えてよいのだろうか?

 筆者は、実はその点こそが大問題であると考える。なぜ、人数が少なくなっているのに、同額の人件費を分かち合わないのか。人数が少なくなった分だけ、1人当たりの分配金を引き上げることでは、何がいけないのか。

 思い出してほしいのは、2006~2009年に団塊世代がリタイヤして、企業が支払う総人件費は大幅に軽減されたことだ。筆者の計算では、企業が2005年に支払っていた50歳代の人件費は65兆円だったのが、2010年に58兆円へと▲7兆円ほど軽くなった。だが、▲7兆円は他の年代の報酬に分配されることなく、単なる総人件費の削減で終わった。

なぜ、1人当たりの
人的投資を増やさないのか

 筆者は、若者が格差に苦しんでいるから賃金を増やしてほしいなどと主張するつもりはない。パイが小さくなるのに世代間闘争をやっても社会的利益は乏しい。

 重要なのは、公正・平等の視点ではなく、効率・成果に対する悪影響である。頭数が減ったから総額も減らそうという発想に、縮小均衡のメカニズムが潜んでいる。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

島本幸治 [BNPパリバ証券東京支店投資調査本部長/チーフストラテジスト]

しまもと・こうじ/1990年、東京大学卒業、日本興業銀行入社。調査部門で金利分析や経済予測を担当。2000年からBNPパリバ証券で投資調査本部長兼チーフストラテジストとして金融市場予測を担う。日本経済新聞社の債券アナリスト・エコノミスト人気調査の債券部門では06、08年に1位。金融庁の金融市場戦略チームや金融税制研究会、行政刷新会議の事業仕分けなどに参加。

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

リーマンショック後の大不況から立ち直りつつあった日本経済の行く手には、再び暗雲が立ち込めている。留まることを知らない円高やデフレによる「景気腰折れ不安」など、市場に溢れるトピックには、悲観的なものが多い。しかし、そんなときだからこそ、政府や企業は、巷に溢れる情報の裏側にある「真実」を知り、戦略を立てていくことが必要だ。経済分析の第一人者である熊野英生、高田創、森田京平(50音順)の4人が、独自の視点から市場トピックの深層を斬る。

「経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層」

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