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連載経済小説 東京崩壊
【第37回】 2012年6月8日
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高嶋哲夫 [作家]

神の怒り

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第3章

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 「妻が生きているときから彼とは飲み友達だ。ICTの最新技術についても色々学ばせてもらっている。この話が動き出すと、私も彼と距離を置かなければならないだろうな。残念だよ」

 森嶋の危惧を察したように言った。

 「新日本建設の社長は大学の先輩に当たる。学部は違うがね。彼の修士論文がやはり首都移転に関するものだった。企業に就職してからも興味は持っていたようだ。ブラジルやオーストラリアの首都については私以上に研究している。学会にも発表している。前の首都移転準備室時代に何度も研究会に来てもらった。いまコンペをやればダントツだろうね。しかしやはり今の関係ではまずいだろう。私が小心者すぎるのかな」

 「そういうつまらないことがネックになることが多々あります。さらに、実際に遂行するとなれば、議員、官僚がこぞって反対するのは必至です。あらゆる手段を使ってくるでしょうね。そういうことには意外と体力と神経を使います。無駄なことは極力避けたほうがいいと思います」

 村津は考え込んでいる。

 「近いうちに殿塚先生とお会いしますか」

 「明日会う約束になっている。きみにも同行してもらうつもりだ」

 森嶋は時計を見た。

 「今日は役所に戻らなくていいよ。風邪を引いて休んでるんだろ。早く部屋に帰って寝るんだな」

 分かりましたと歩き始めた森嶋を村津が呼びとめた。

 「きみがハーバードで書いた論文の概略を作ってきてくれ。それをグループ内で講義してほしい」

 村津は軽く手をあげると森嶋とは反対方向に歩いていった。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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