デジタルプラットフォーマーに対する大規模かつ包括的な初の実態把握調査に乗り出した公正取引委員会。“市場の番人”が見据えるのは、データの世界における競争阻害行為の排除だ。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)

──公正取引委員会はデジタルプラットフォーマーの取引慣行に関する一斉調査に乗り出しました。その狙いは何でしょうか。

公取委員長吠える!GAFAの「勝者総取り」は許さないすぎもと・かずゆき/1974年大蔵省入省。財務省大臣官房長、主計局長を経て2008年事務次官。11年みずほ総合研究所理事長、TMI総合法律事務所客員弁護士などを経て13年3月より現職。 Photo by Masato Kato

 まず基本認識として、デジタルプラットフォーマーが世の中に利便をもたらしているのは間違いない。テクノロジーの進展に伴い、今や生活の一部になるような利便性を供与していることは大変評価しています。

 ただしこの世界には「ウィナー・テーク・オール」(勝者総取り)という言葉がある。プラットフォームを介して消費者と出品者がつながる二面市場では、消費者が増えるほど効果が増大するネットワーク効果が働くため、独占的もしくは寡占的になりやすい傾向がある。従ってわれわれは、支配的地位を占めるようなプラットフォームビジネスが競争を阻害する行為をしていないかどうか監視する必要があります。

 イノベーションは経済を発展させる上で重要であり、まさにプラットフォームビジネスもイノベーションのたまものでしたが、それが支配的地位の乱用という行為に走ると新たなイノベーションを阻害する。そういった行為をなくすことが公正取引委員会の使命だと思っています。

 プラットフォームビジネスは不公正な取引慣行の温床となったり、透明性に欠けたりするといった指摘もある。そうした点を踏まえ、今後どう対応するかの出発点として実態調査を開始しました。