東京電力ホールディングスの最大のミッションである、福島第一原子力発電所の廃炉作業が少しずつ進展している。作業が進むにつれて費用の全体像が明らかになり、コストが上振れするリスクをはらむ。 (ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

 東日本大震災から8年を控えた今年2月13日。東京電力ホールディングス(HD)福島第一原子力発電所2号機で、事故による炉心溶融(メルトダウン)で溶け落ちた核燃料(デブリ)の接触調査が初めて行われた。

 少なくとも40年の長期に及ぶ廃炉作業の中で、原子炉格納容器の底にたまったデブリの取り出しが最も難しいプログラムだ。

 東電HDにとって、ロボットによる今回の接触調査でデブリを“つかむ”のに成功したことは、わずかだが、廃炉の完遂に向けて一筋の光明が差したといえる。

 と同時に、東電HDは廃炉費用の上振れリスクを抱える。福島第一原発の廃炉完遂までにどれくらいの金が要るのか、誰にも正確に分かっていない。廃炉作業が進めば進むほど、廃炉に必要な費用の全貌が判明し、さらなるコストの積み上げが必要になる可能性があるのだ。

 震災後の2010年度末に1兆2400億円もの最終赤字を計上し、一時は自己資本比率が3.5%まで悪化した財務基盤は、国の出資や財政支援もあって向上し、13年度から6期連続で最終黒字を確保しそうだ(図1)。