週刊ダイヤモンド2019年5月11日号は「人事大激変! あなたの評価・給料が危ない」です。人工知能(AI)などを駆使した企業が人材ビジネス業に参入し、業界秩序を変えようとしています。迎え撃つ業界最大手、リクルートの小林大三常務に今後の展望などを聞きました。(聞き手/ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

――2008年のリーマンショック後、人事部が抱える課題はどう変わりましたか。

リクルート幹部が断言「買収したインディードとはビジネスの棲み分けができる」小林大三(こばやし・だいぞう)/リクルート常務執行役員HR事業本部・リクルートキャリア社長 1991年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。12年リクルートテクノロジーズ社長兼リクルートホールディングスIT戦略室長、17年4月からリクルートキャリア社長 Photo by Hirobumi Senbongi

 日本の生産年齢人口が10万人減りました。「企業が選ばれる時代に突入した」のが一番大きな変化だと思っています。それまでは企業が個人を選別できましたが、今はそれが逆転したのです。

 僕らはそれを「主権の移動」と言っています。つまり、採用の主権が企業から個人へと移動したということです。

――そういった中、人事部は課題山積ですが、リクルートとしてこれからどんなサポートを強化していきますか。

 企業を選ぶ個人が多様化しています。能力だけでなく、働き方の条件や志向自体が様々に変化しています。

 企業人事をプロダクトを作っている会社に例えるなら、多様化した個人にプロダクトを売れるか? 売れないか? をマーケティングをするように、科学的にアプローチしなければいけない時代になっている。

 そこで、2つ大事なポイントがあります。

 1つは、企業の人事部だけが、「どういう戦略、アプローチを採るか?」を考えるだけでなく、企業自体が変革しないといけません。

 先ほどのメタファーでいうと、プロダクトそのものを変えないといけない。企業が本当にほしい人材を採用したい時に、「その人材はどういう企業を選ぶのか?」という軸で、企業の人事施策とか文化とか環境を変えていかなければならない。

 もう1つは、そうなってくると企業側の負荷・工数が加速度的に増える。その中で、僕らは働くことがIoTの進化によって可視化され、科学されるということを重く受け止めています。データで科学をすることが企業人事に求められるのです。