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田中均の「世界を見る眼」

未解決の重要外交懸案をいつまで積み重ねるのか?
日本は「国民感情の罠」からの脱却を

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第9回】 2012年6月20日
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支持率という「民意」に引きずられる
再選挙のギリシャと似通った日本の姿

 17日に行なわれたギリシャの再選挙は、緊縮財政派が第一党の座を占め、連立に向け協議を進めている。反緊縮財政派が勝利していれば、ギリシャのユーロからの離脱が現実味を帯び、欧州経済のみならず、世界経済に大きな影響を与えていたのであろう。

 率直な国民感情からすれば、援助の見返りとしてEUと合意した厳しい緊縮財政は、国民生活の窮乏化につながり反対であると言うことだろうし、既成政党に替わり、若いエネルギッシュな党首に率いられ反緊縮財政を掲げる新しい政党に投票したいということなのだろう。

 国家が国民感情に引きずられ、中長期的な政策の実現が困難になっていくという図式は、ギリシャ特有のことではない。日本においても似通った問題がある。

 日本の場合には、ここ数年、内閣支持率という名の「民意」が強く働き、中長期的国益にはかなうが国民に不人気な政策は実行しがたく、また支持率の低下は首相の交代につながるという悪循環を繰り返してきた。

 二大政党制が定着し、大統領制をとる米国や仏では、民意は基本的には選挙による政権交代をもたらすということであり、議院内閣制の英国、あるいはドイツにおいても小さな第三党が状況次第で得票を増やし、連立のキャスティングボートを握ることはあっても、基本は二大政党間の政権交代である。

 いずれの国においても現職が、余程のことがない限り4年から8年程度は、大統領あるいは首相として統治する。国民感情が直接的に、頻繁な指導者の交代という統治の根本を揺るがすことに繋がってはならないという認識は強い。これが先進国たる所以なのであろう。

 日本における頻繁な首相の交代は、民意を示すとされるメディアの「内閣支持率」が差配している。低い内閣支持率となると、野党の攻勢だけではなく与党内が浮き足立ち、「こんな低い支持率の首相の下では選挙が戦えない」として、首相を引きずり下ろす力が働く。「政局」である。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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