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連載経済小説 東京崩壊
【第44回】 2012年6月25日
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高嶋哲夫 [作家]

デフォルト

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【前回までのあらすじ】
能田総理は、ユニバーサル・ファンドが3段階格下げされた日本国債を買い漁っているという報告を受けた。彼らはすでに数十兆円を保有しているという。彼らの真の狙いは何か。総理はすぐに調べるよう官房長官に指示を出す。
森嶋と村津は、自由党の殿塚と会うために渋谷の居酒屋に行く。村津は、総理が首都移転について積極的に考えていることを殿塚に打ち明ける。殿塚は、首都移転と道州制は、セットで考えたほうがいいとアドバイスする。殿塚と別れたあと、村津は殿塚について意外なことを口にする。肝臓癌で余命半年と宣言されているというのだ。森嶋は何と言うべきか言葉が見つからなかった。
帰宅した森嶋は、なかなか寝つけずに仕事をしていた。すると、インターホンが鳴った。ディスプレイを見ると、マンションの入り口にロバートが立っていた。ロバートは、中国が日本のメガバンクのひとつである東友銀行の株を大量に買っていると森嶋に教えにきたのだ。資金の出所は中国政府で裏も取ってあるという。中国の狙いは何なのか。日本のデフォルト、国家破綻だと推測するロバート。デフォルトという言葉が突然、現実的なものとなって森嶋の脳裏に迫ってきた。いずれ、本気でその危惧をしなければならない時がくるのかもしれない。そんなことがあっては、断じてならない。森嶋は強く心に誓った――。


第3章

16

 窓から差し込む光が次第に強くなってきた。

 いつの間にか雨は上がっている。

 森嶋はまだぐっすり眠ているロバートをおいて、マンションを出た。

 学生時代もそうだった。試験の後には決まって、24時間以上眠り込んでいた。3、4日の徹夜は平気だが、その分、あとで取り戻す。森嶋も真似ようとしたが出来なかった。10時間以上は眠れない。眠るにも体力がいる。ロバートを見ていて、つくづく思ったものだ。

 午前中、ロバートの言葉を考えながら落ち着かない時間をすごした。

 デスクに座っていても、国家破綻、中国の介入……、ロバートの言葉が脳裏を流れていく。

 「あなた、ヘンよ。また何かおかしなことがあったの。あなただけに特別なことが」

 優美子が話しかけてきたが、無視して仕事に集中しようとした。

 昼休みに優美子を誘いだした。

 「聞きたいことがある」

 コーヒーショップの椅子に座り、森嶋は優美子を見つめて改まった声を出した。

 「なによ。真剣な顔をして」

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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