選挙をスルーし続ける日本人の末路は?

 本書は著者が、愛娘に経済を説くという体裁をとった経済入門書だが、その語り口からは、ただの机上の知識としの経済ではなく、「ぜひ本質を理解してほしい」という、真剣な思いがあふれている。

 たとえば、なぜ一般の、大きな力を持たない人間も積極的に政治や経済の問題に声をあげるべきかという、一見自明に見えはするものの、どうしても道徳くさい(押しつけがましい)話になりそうな問いについては、こんなシンプルな説明で本質を突く。

 誰もが経済についてしっかりと意見を言えることこそ、いい社会の必須条件であり、真の民主主義の前提条件だ。
 景気の波は私たちの生活を左右する。市場の力が民主主義を脅かすこともある。経済が私たちの魂の奥に入り込み、夢と希望を生みだしてくれることもある。専門家に経済をゆだねることは、自分にとって大切な判断をすべて他人にまかせてしまうことにほかならない。
『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』より。太字は引用者)

「誰もが経済についてしっかりと意見を言えること」こそが真の民主主義の前提条件だと説いているが、著者がこうしたことをあえて語っているということは、どうやら「専門家に経済をゆだねる」ような傾向は、日本ならずともあるようだ。

 とはいえ程度を考えると、日本人の「他人まかせ」の感覚は突き抜けている感がある。スウェーデンやデンマークなど北欧諸国では国政選挙の投票率が80%を超える国もある一方、日本の投票率はなんと世界156位という衝撃的な低さであり、OECD加盟国でも36か国中30位と先進国で最低クラスだ(明治大学国際日本学部鈴木研究室「国際日本データランキング」より)

 他人に人生の大事な選択をまかせるどころか、そもそも誰にまかせるかの選択すら放棄してしまっているという現状だ。その意味では本書のメッセージは、まさに日本人にこそ強く響くものといえそうだ。

 とりわけ日本の20代は投票率が極端に低く、昨年10月の衆院選の投票率は全年代が53.7%なのに対し20代は33.9%、一昨年7月の参院選では全年代が54.7%なのに対し20代は35.6%という低さだった(総務省調べ)

 これでは自分たちの利害が政治や経済に反映されないのも当然であり、高齢世代に都合のいい政策を謳う政治家ばかりが当選し、いまの若者世代が中高年〜老年になるころには、経済格差がさらに広がり、年金制度は破綻、医療費は高騰……と、かつて投票に行かなかった自分たちを呪うような「末路」となってもおかしくない

 経済は人の生活のすみずみにまで入り込んでいる。年金問題も消費増税もすべて経済であり政治の問題だ。自分の賃金がこれからどうなっていくかも国の政策が大きく影響する。好むと好まざるとにかかわらず、経済は人の人生を大きく左右してしまうものだ。

 ぜひ今回の参院選は「あきらめムード」に流されず、問題山積の日本の「末路」を少しでもいい方向に変えるために投票に足をのばしてほしい。

 そして投票日に備えては、本書を読んで経済の本質をつかみ、候補者の経済政策を判断する一助としてはいかがだろうか。