ジョンソン首相が誕生
英EU離脱は強行されるか
英国ではロンドン時間の7月23日、与党・保守党の党首選の結果が判明し、ボリス・ジョンソン前外相が新党首に選任され、第77代の首相に就任することになった。24日午後に就任するジョンソン新首相は、決選投票前に実施された保守党下院議員による予備投票でも着実に票を獲得しており、大差で勝利することが確実な情勢であった。
ジョンソン新首相は10月31日までとされる欧州連合(EU)からの離脱の期日が到来すれば、「合意なき離脱(ノーディール)でも構わないので離脱を優先すべきだ」と主張する、典型的な離脱強硬派である。ただ金融市場では、ジョンソン新首相の就任は事前に織り込まれており、英国の通貨ポンドの相場は小幅下落にとどまった。
メイ前首相による離脱交渉が不調に終わり、与党である保守党の支持率は急速に低下した。最新のユーガブ社の世論調査(7月16~17日調査)では、保守党が政党支持率で引き続きトップであるものの、わずか25%に過ぎない。その後は労働党21%、自民党20%、離脱党19%といずれも僅差で続き、実態としては四つ巴の状態にある。
党勢の建て直しが急務である保守党にとっては、現実主義者である他の候補者よりも、カリスマ性があり強いリーダーシップが期待できるジョンソン前外相を前面に押し出した方が得策だという判断が、党所属の下院議員を中心に働いたものとみられる。ただ、ジョンソン新首相の誕生でどれだけ党勢の回復が見込めるかは未知数だ。
実際、その保守党の中からもジョンソン新首相に対する造反が出始めている。マーゴット・英デジタル・文化・メディア・スポーツ担当閣外相をはじめ、ダンカン外務担当閣外相がジョンソン新首相の離脱方針を巡り辞任した。ハモンド財務相も新首相の方針に反対しており、辞任の意向を目指している。
また世論との乖離も大きい。EU離脱を目指す離脱党と保守党の支持率の合計値(44%)と、EU残留を目指す自民党と労働党の支持率の合計値(41%)の差は3%ポイントに過ぎない。また交渉の膠着を期待して、保守党から離脱党に支持政党を鞍替えした有権者もいるが、彼らのすべてが必ずしもノーディールでのEU離脱を支持しているわけではない。