アレグラの処方薬は日本で2011年に629億円を売り上げた

 花粉症治療薬である抗ヒスタミン薬でトップシェアの「アレグラ」がついに薬局やドラッグストアで自由に購入できるようになる。アレグラは数ある花粉症薬のなかでも眠気の副作用が少ない薬として好まれているが、これまでは医師が処方する医療用医薬品(処方薬)としてのみ販売され、同薬を使う患者は受診の必要があった。

 なぜ今のタイミングで処方箋不要の市販薬になるのか。じつはここに製薬業界独特の事情がある。

 新薬メーカーの薬は特許が切れると、同じ有効成分でより安価な後発薬が参入してシェアを落とす運命にある。特許庁は昨年末、複数のジェネリック医薬品(後発薬)メーカーからの審査請求に応じ、アレグラの日本での用途特許を無効とする審判を下した。

 これに対し、アレグラを製造販売する仏製薬大手サノフィの日本法人サノフィ・アベンティス(以下、サノフィ)は用途特許が2014~15年まで有効だと主張し、知的財産高等裁判所に特許庁の審決取り消しを求めて控訴した。そのため後発薬はまだ参入していない。

 サノフィは一方で後発薬参入への備えを二つ講じていた。

 その一つは「オーソライズド・ジェネリック」(AG)だ。AGとは特許を持つ新薬メーカーが公認する後発薬のこと。子会社などにAGを発売する権利を与え、競合の後発薬が参入する前にAGを発売すれば、先行して後発薬の市場でシェアを確保するチャンスが生まれる。

 サノフィが出資する合弁会社は2月、国からAGの販売承認を取得した。これによって6月に国の薬価基準に収載されるのを待ってAGが発売できる。いや、発売できるはずだった。サノフィは特許訴訟の動向を見ての判断なのか、結局6月の薬価収載を希望する際に必要な申請を見合わせた。この策はひとまず保留となった。

 二つ目の策が市販薬への転用である。サノフィは7月2日に市販薬での販売承認を取得し、同日に市販薬を販売する合弁会社を久光製薬と設立した。発売日は未定だが、次のスギ花粉症シーズンをにらんだ時期になる可能性が高いだろう。