世田谷区と中央区の人口増における格差は何が原因か世田谷区と中央区の人口増における格差は何が原因か。2つの地域の住宅事情から探る(写真はイメージです) Photo:PIXTA

タワーマンション全盛の
時代に復活を遂げた中央区

 中央区の人口はジリ貧傾向で、1997年には7万2090人に減っていた。これは2019年の半数に満たない数字だ。今の水準まで人口が増えた背景には、何があるのか。

 その理由は、1993年から中央区が容積緩和を実施したことだ。容積緩和とは都市計画上の容積率を上げることだ。単純にこれまでより高い建物が建てられるようになったのだ。これにより、同じ土地面積に対して、建物面積が容積緩和した分だけ増える。

 たとえば、建物面積が25%増えれば、賃貸であれば25%賃料収入は伸びる。今や家賃収入に応じて不動産の価値が決まる時代である。家賃が25%増えれば、売買価格も25%上がる。この容積緩和によって、デベロッパー(不動産開発業者)はこぞって収益を生みやすい中央区で開発競争を始めた。

 マンションがたくさん建つと、オフィスへの職住近接を望むニーズを吸収して人口は増え始めた。こうして、2019年に人口は16万人に増えた。1997年の2倍以上となる。

 容積緩和はすぐに実績が出た。中央区でタワーマンションが多く建つようになったのは1996年頃で、月島や晴海でランドマークとなるタワーマンションが建てられた。通常のマンションより建築単価の高いタワーは、通常の構造より多少割高で、価格面で評価が割れていたが、その後中古になっても価格が下がらなかったことから人気を高めることになり、売れ行きでは通常物件を明らかに上回るようになる。

 この高層化を実現する建築技術事情と時代背景を同じくして、中央区はタワーマンション全盛時代の申し子のように、容積率を最大限活用することになる。