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スマートフォンの理想と現実

メール内容を読み取るインタレストマッチ広告が物議
老朽化した「通信の秘密」は聖域なき再考が必要か

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【号外】 2012年7月13日
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 今回、すべて(らしい)とわざわざ書いたのは、そのすべてが(以前のコードが手元にないため)すでに検証できないからだ。もしかするとそれは私のそもそもの事実誤認で、当初からサーバ側でのマッチングだったのかもしれない。そして現状は、どうやらサーバ側での処理が主流らしい。つまり、Googleも「アウト」ということだ。

 電子メールの内容にフィットした広告を配信するのに、メールの中身を読み取るのが、クライアント側(ユーザのPCやスマートフォン上で起動されるブラウザ等)か、サーバ側(Googleのクラウド側)か――些細な話に見えるかもしれないが、しかし「通信の秘密」に抵触する重大な問題である。

 クライアント側であれば、メールを読み取るのはあくまでユーザの管理下にある環境である。従って広告配信したい事業者側はメールを読み取っておらず、マッチングもユーザ環境の下で行われている。だから事業者は利用者のメールの内容を読んではおらず、「通信の秘密」を侵害していない。そんな「理屈」が(一応ではあるが)成立する。

 しかしサーバ側での読み取りとなれば、そうはいかない。事業者が有する資産の側でメールの中身を読んでしまっているのだから、電気通信事業者がメールの内容を読んではならないという「通信の秘密」を侵していると考えることが、十分可能となる。

 こうした構造の違いを、どう考えるか。注目を集めるYahoo!JAPANのインタレストマッチ広告の問題も、本来はこうした観点から議論を進めるべきである。少なくとも、サーバの所在地が国内外のどこかといった話は、実に枝葉末節にとらわれた話である。

 実際、総務省が公開する「電気通信事業参入マニュアル(追補版)」においても、登録又は届出を要する電気通信事業として、国外サーバを用いた電子メールが挙げられ、

 「国内に事業を営む拠点を置く者が、国外に設置した電気通信設備(サーバ等)を用いて、インターネットを通じて国内の利用者向けに提供する電子メールをいう。電気通信設備の設置場所についての限定はなく、国外に電気通信設備を設置していたとしても、国内に事業を営む拠点を置く者が国外の電気通信設備を支配・管理していることから、電気通信設備を用いて他人の通信を媒介する電気通信役務を提供すると判断される。」

 と記されている。法の精神が「サーバの所在地に関わらず、日本国民(ないしは日本にいる生活者)を守る」ことにあるのは明白だ。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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