どうすれば日本はバブル崩壊後の「失われた20年」を取り戻すことができるのだろうか。『週刊ダイヤモンド』7月21日号の特集「激論!日本経済」では、これまでさまざまな専門家が挑んできたこの難題について、16人の論客が侃々諤々の議論を繰り広げる。互いに一歩も譲らない火花を散らす熱論を通して、問題の論点を整理し、経済混迷の本質に迫る。答えはどこにあるのか。「激論」の一部をお伝えしよう。
「金融政策でデフレ脱却できるか」
池尾和人・慶應義塾大学教授 vs. 武藤敏郎・大和総研理事長
武藤 10年金利が1%の日本では結局、量的緩和以外に選択肢がない。少しは意味があることをやり続けるのは、理論的には議論があるかもしれないが、実務的には決して軽視すべきではない。(中略)政策当局としては、ほぼ効果がないから何もせず、「時間が解決する」というわけにはいかないんです。
池尾 私は、もうやめたらいいのにと思いますが。既に0.8%ぐらいの長期金利を、頑張って0.3%まで下げたところで、絶好の設備投資の機会だと思う人はまずいない。
武藤 政策金利がたった0.1%でも、数字がついているところに私は意味があると思っている。まだ、ゼロ金利ではない。
しかしさまざまな弊害はある。どんな政策にも副作用はつきもので、今の日本は副作用を考慮しても、窮状を乗り越えるべく緩和を続けることも必要だと思います。
池尾 デフレ脱却が景気回復の前提だという方がいますが、これは明らかにおかしい。デフレ脱却の意味によりますが、経済の低迷からの脱却という意味なら、それは景気回復とほとんど同義反復です。
健全な形でインフレ期待が醸成されることが景気回復の前提だというなら理解できる。しかし実際に物価の下落が止まるのは景気回復した後なんです。
(本誌の対談より抜粋)