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野口悠紀雄の「経済大転換論」

海図なき航海に出る日銀と日本経済

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第20回】 2012年5月31日
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 日銀は、5月23日の政策決定会合で、格別の追加緩和措置をとらないことを決定した。しかし、今後一層の金融緩和を求める圧力が高まる可能性が高い。

 そう考えられるいくつかの理由がある。

 第1は、消費税法案の行方が危ないことだ。仮に今国会会期内で成立できないとなれば、今後永久にできない可能性が強い。もちろん、社会保障制度の改革もできない。日本の財政は、コントロールできない状況に陥り、国債発行はとめどもなく膨張する。そうなったとき、日銀は国債を際限なく買い支えるだろうか? もしやめれば、国債価格が暴落し、銀行に巨額の損失が発生することになる。このような認識が一般化すると、市場が動揺するかもしれない。それを抑えるために、追加緩和の要求が高まるだろう。

 いま1つは、ヨーロッパの金融市場の混乱によって、円高がさらに進むことだ。すでに、日本国債だけでなく、外国政府債を購入せよとの要求(つまり、日銀が為替介入をせよとの要求)が生じている。

日銀の金融政策に関する
大きな不確実性

 ここで問題なのは、日銀が国債をどこまで買い進むかについて、見通しがつかないことだ。これまでは、「日銀券ルール」という限度があった。それが経済的に意味があるルールか否かについては議論の余地があるにしても、「日銀の行動に関して見通しを与える」という意味で重要だったことは間違いない。

 「資産買入基金」の創設は、日銀券ルールを崩す可能性をもたらした。そして、前回述べたように、今年中には、日銀券ルールの上限を超えそうだ。

 基金の購入限度額は、これまでなし崩し的に引き上げられてきた。しかし、何をめどに、どこまで引き上げるかについてのガイドラインはなかった。日銀の行動についてルールがなくなったので、将来の行動を読めなくなってしまったのである。

 もちろん、現在日銀は、消費者物価上昇率についてコミットしている。しかし、後に述べるように、1%という目標は容易には達成できない。4月の消費者物価指数は伸び率がプラスになったが、1%にはほど遠い。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄の「経済大転換論」

日本経済は今、戦後もっとも大きな転換期にさしかかっている。日本の成長を支えてきた自動車業界や電機業界などの製造業の衰退は著しく、人口減や高齢化も進む。日本経済の前提が大きく崩れている今、日本経済はどう転換すべきなのだろうか。野口悠紀雄氏が解説する。

「野口悠紀雄の「経済大転換論」」

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