日銀は、5月23日の政策決定会合で、格別の追加緩和措置をとらないことを決定した。しかし、今後一層の金融緩和を求める圧力が高まる可能性が高い。
そう考えられるいくつかの理由がある。
第1は、消費税法案の行方が危ないことだ。仮に今国会会期内で成立できないとなれば、今後永久にできない可能性が強い。もちろん、社会保障制度の改革もできない。日本の財政は、コントロールできない状況に陥り、国債発行はとめどもなく膨張する。そうなったとき、日銀は国債を際限なく買い支えるだろうか? もしやめれば、国債価格が暴落し、銀行に巨額の損失が発生することになる。このような認識が一般化すると、市場が動揺するかもしれない。それを抑えるために、追加緩和の要求が高まるだろう。
いま1つは、ヨーロッパの金融市場の混乱によって、円高がさらに進むことだ。すでに、日本国債だけでなく、外国政府債を購入せよとの要求(つまり、日銀が為替介入をせよとの要求)が生じている。
日銀の金融政策に関する
大きな不確実性
ここで問題なのは、日銀が国債をどこまで買い進むかについて、見通しがつかないことだ。これまでは、「日銀券ルール」という限度があった。それが経済的に意味があるルールか否かについては議論の余地があるにしても、「日銀の行動に関して見通しを与える」という意味で重要だったことは間違いない。
「資産買入基金」の創設は、日銀券ルールを崩す可能性をもたらした。そして、前回述べたように、今年中には、日銀券ルールの上限を超えそうだ。
基金の購入限度額は、これまでなし崩し的に引き上げられてきた。しかし、何をめどに、どこまで引き上げるかについてのガイドラインはなかった。日銀の行動についてルールがなくなったので、将来の行動を読めなくなってしまったのである。
もちろん、現在日銀は、消費者物価上昇率についてコミットしている。しかし、後に述べるように、1%という目標は容易には達成できない。4月の消費者物価指数は伸び率がプラスになったが、1%にはほど遠い。