【前回までのあらすじ】
インターナショナル・リンクの記者会見を翌日に控え、理沙は森嶋にCEOのダラスと直接会って話してはどうかとアドバイスする。森嶋は一瞬考えた後、携帯電話のボタンを押した。ダラスが出ると森嶋はロバートの名前を出して、彼と一緒に葉山で会ったことを告げる。森嶋はダラスとの面会を取り付けた。森嶋と理沙はすぐにタクシーでダラスのいるホテルに向かう。
森嶋は、明日の発表は今日のデマの影響を受けてのことですかとダラスに切り込む。間違った情報でも、広まってしまえば真理に近くなると、ダラス。森嶋はダラスに見せたいものがあると言い、同行を求める。理沙の説得もあり、渋々同意するダラス。森嶋と理沙、ダラスを乗せたタクシーは六本木にある長谷川の事務所に向かった。
ロビーでは長谷川と早苗が待っていた。ダラスは信じられないという顔で長谷川に握手を求めた。世界的に著名な建築家だと知っていたのだ。長谷川は模型のある部屋へ3人を案内する。ダラスは新首都の模型を凝視した。そこへ村津と殿塚が部屋に入ってきた。森嶋は村津を首都移転チームのリーダーとしてダラスに紹介する。殿塚のことは野党の重鎮として知っているようだった。
村津は首都移転についてダラスに説明する。頷きながら話を聞くダラス。しかしその顔は半信半疑だった。すると、殿塚が道州制についても考えていると語り出す。時計を見るとホテルを出てからすでに2時間が経過していた。森嶋と理沙、ダラスの3人はタクシーでホテルに向かう。ダラスを降ろし、次に理沙を新聞社の前で降ろした。
森嶋はタクシーを降りて地下鉄のホームに入り優美子に電話をする。優美子は、サイバーテロの第2弾があったこと、そしてもう1ランク格付けが下がったら、銀行まで日本国債を売り始め、取り付け騒ぎが起きるかもしれないと言う。森嶋は、明日役所で会おうと言って、優美子が何か言っているのを無視して携帯電話を切った。

 

第3章

25

 森嶋は眠れない夜をすごした。

 目を閉じると、東京を襲う巨大地震と富士山噴火の光景が浮かんでくる。出所不明の論文とCG映像が世界にばらまかれたのだ。そしてそれらを見つめるインターナショナル・リンクCEOのダラスの厳しい表情が闇の中に現われた。

 翌朝、理沙の言葉通り、テレビの朝のワイドショーはインターネットに流れた地震と富士山噴火の話題で持ちきりだった。

〈昨日の日本を含めて世界中に地震予知の論文と共に、富士山噴火のCG映像が流れました。日本国内における地震予知騒ぎは過去に何度もありましたが、今回のように10ヵ国語以上に翻訳されたものが世界に出回るというのは初めてです。特に富士山噴火の論文は、主に全世界の金融関係の機関に送られています。これは新種の悪質なサイバーテロであり、警察庁が中心となって捜査を始めています。この論文が世界に出回るとともに、日本国債は大きく値を下げています。さらに、円売りドル買いの傾向もさらに進み、1ドル120円に迫っています。このような急激な円安が日本社会に与える影響は大きく、政府も対策に追われています〉

 ワイドショーの若い女性アナウンサーが読み上げている。

 どのチャンネルもこの話題を扱っていた。

 富士山噴火の情報が流れたのは、日本を含めた世界の金融機関だったが、そのことがかえって真実味を増してマスコミに取り上げられ広まっていったのだ。番組の中でも、この話題を取り上げた世界のニュースを紹介している。

 森嶋は早めに役所に行った。

 省内に入ると始業時間より30分も前だというのに、すでに多くの職員が行き交っている。地震と火山噴火は国交省に大きく関係しているのだ。

 首都移転チームも半数以上の者が来ていた。

 「騒ぎすぎだ。たかが火山の噴火だ。国がどうこうするほどじゃない」

「いや、富士山は違う。過去の例を見れば火山灰の被害は関東一円にまで広がる。それが何ヵ月も続くんだ」

「問題は風評被害だ。まず外国人が逃げ出し、外国からの要人はもとより観光客も来なくなるだろ」

 部屋中から様々な声が聞こえてくる。