「店周辺の世帯数や従業員数を確認しましょう」
地図を用意して書き出すよう要求

 本部のシステムを使っても人が集まらなければ、時短営業の検討に進めると思いきや、“深夜閉店を実施する前に”行うべき項目はもう一つある。それは、「商圏、使われ方の確認」である。

 この目的は、深夜閉店予定時間帯の顧客ニーズの把握だという。そして、オーナーがやるべき具体的な項目として、「自店周辺の地図を用意し、周辺で影響のある施設や事務所、住宅を書き出し、従業員数および世帯数を確認」するよう求めている。

 近隣にある事業所の従業員数や世帯数を地図に書き込んでいく作業は結構な手間が掛かりそうだ。そして、人手不足で深夜に自らシフトに入らざるを得ないような多忙なオーナーが、こうした作業に時間を割けるかどうかは疑問符がつく。そもそも、こうした商圏分析は、本部が出店時に実施しているはずである。

 加えてオーナーは、自店のストアコンピューターで時間帯別の客数や売り上げを把握できる。深夜の客の動向はこれで推測可能で、あるセブンのベテランオーナーは、「本部は時短営業を諦めさせるため、オーナーに無意味で無理難題なハードルを設けている」と指摘する。

 他にも、オーナーに時短営業をためらわせかねない説明がガイドラインにある。

社会保険未加入問題は放置する一方で
深夜従業員の解雇ルールは詳細に説明

「深夜閉店に伴う雇主としての責任」――。時短営業を始めれば、深夜に勤務している従業員の夜間の仕事はなくなることになる。その場合について、「従業員の労働条件を一方的に不利益に変更することはできません。また、深夜シフトの従業員に休業を強いた場合、事業主都合による休業に該当し、最低でも休業手当として平均賃金の60%を保証しなければなりません(労働基準法第26条)」と言及しているのだ。

 そして経営上の必要性、従業員側の不利益を回避する努力、対象となる従業員の人選の合理性について、「妥当な手続きにより複数回、時間をかけて説明・協議します」と記されている。

 さらに、従業員の退職が必要な場合も、「万が一深夜閉店をはじめるという理由のみで従業員を解雇した場合、解雇は無効となる可能性が極めて高く、解雇予告手当の支払いだけでなく、あっせんや訴訟等のトラブルになるため慎重な対応が必要です」と念押ししている。