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井熊均の「性能神話」を打ち破れ

投資効果の急激な低下を招く
「理論限界」という壁

井熊 均 [日本総合研究所創発戦略センター所長/執行役員]
【第3回】 2012年7月25日
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前回までは、相次ぐ日の丸企業の凋落の原状と、日本の産業政策の基本となった「雁行モデル」の理念について検証してきた。雁行モデルとはアジアの技術力が伸長し日本に追いついてきたら、日本は彼らが作ることのできない製品をつくり、アジアを引き離せばいい、というものである。しかし、製品の性能向上は限界に近づいており、もはや日本が逃げ切れる余地はなくなりつつある。今回から2回にわたり、性能限界の中でも、理論限界と知覚限界について検証していきたい。両者の限界の意味を知ることが、戦略再構築のスタートとなるからである。

製品には宿命的な
性能限界がある

 製造業は技術開発のために多額の資金を投じる。毎年優秀な大学の工学部から数多くの学生を採用し、何年もかけて一人前の技術者に育て上げる。たいていの会社は研究所を持ち、将来の製品の種となる基礎技術や、既存製品の商品力を高めるための研究にいそしむ。企業である限り、営業、管理などの部門もあるし、図面どおりに商品を生産する部門もあるが、新しい製品を開発する部門こそ製造業の競争力の根幹である。

 どんなに経営状況が苦しくても、歯を食いしばってこうした部門を維持するのは、より高い性能の製品を開発することで、顧客により高い満足感を得てもらい、競争相手を引き離すためである。その営みが便利で快適な社会を築き、ダイナミックな市場の源泉となってきた。性能向上は尽きることのない製造業のミッションとも言える。

 筆者もエンジニア出身だから、技術開発の重要性ややりがいはよく分かる。しかし、一生懸命研究したからといって性能は永遠に上がり続ける訳ではない。性能には理論的な限界があるからだ。理論限界に近づくと開発投資の効果は急激に低下し、後ろを飛ぶ雁(前回「雁行モデル」参照)からは前を行く雁のスピードが低下したように見える。

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井熊 均 [日本総合研究所創発戦略センター所長/執行役員]

いくま ひとし/1983年早稲田大学大学院理工学研究科修了、三菱重工業(株)入社、90年日本総合研究所入社、95年アイエスブイ・ジャパン設立と同時に同社、取締役に就任(兼務)、97年ファーストエスコ設立と同時に同社マネージャーに就任(兼務)、2003年早稲田大学大学院非常勤講師(兼務)、03年イーキュービック設立と同時に取締役就任(兼務)、06年日本総合研究所 執行役員 就任。近著に『次世代エネルギーの最終戦略-使う側から変える未来』(2011年、東洋経済新報社)『電力不足時代の企業のエネルギー戦略』(2012年、中央経済社)。


井熊均の「性能神話」を打ち破れ

日本企業の凋落がとまらない。企業の産業戦略の基本理念であった「雁行モデル」では、もはやグローバル社会で戦えなくなってきている。その理由は、性能を上げれば逃げ切れる、という性能神話にある。今こそ日本企業は、単品の性能神話から脱し、自らの「組み合わせ」の強みを再認識し、グローバル戦略の中核に据えるべきだ。中国をはじめ新興国で多くのエコシティビジネスを手がける日本総研の井熊均氏が、日本復活のチャンスを問う。

「井熊均の「性能神話」を打ち破れ」

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