ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
井熊均の「性能神話」を打ち破れ

崩れた雁行型発展モデル
もう性能では逃げ切れない

井熊 均 [日本総合研究所創発戦略センター所長/執行役員]
【第2回】 2012年7月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

隊列入り乱れた「雁行モデル」

 日本は戦後の荒廃から立ち上がって奇跡的な経済成長を遂げ、世界第2の経済大国となった。また、自身が経済大国となっただけでなく、アジアの発展にも貢献したとされる。

 韓国、シンガポール、台湾、香港はアジアの「四小竜」と呼ばれ、日本をも凌駕するような経済成長を遂げた。日本はこれらの国々に技術と資金を投入することにより、成長トレンドを持ち込んだ。そして、四小竜の国々の産業が高度化し、労働コストが上がってくると、労働集約型の産業は東南アジア諸国に移転され、当の日本はさらに高度な産業を作り上げようとした。

 日本を起点に、韓国、シンガポール、台湾、香港、次いで、中国、東南アジア、等と成長を続ける様が、雁が隊列を作って飛ぶ様子に似ていることから、こうした産業構造は「雁行モデル」と呼ばれた。かつては、アジアの成長モデルとして教えられた。しかし、今や「雁行モデル」の存在を信じる人は少なくなっている。

 日本の製品が必ずしも高度とは言えなくなっているからだ。例えば、韓国サムスンの作ったスマートフォンの性能は、日本製に勝るとも劣らない。資金面でも日本企業がアジアの企業に買収されることは珍しくなくなっている。アジアの「雁行」は今やまっすぐな隊列ではない。隊列は入り乱れ、日本はアジア経済の盟主とは言えなくなっている。

技術の波及スピードが増す

 「雁行モデル」が崩れ、日本企業が追いつき追い越されるようになった第一の理由は、後を行っていたはずの国々の技術力の成長スピードが上がったことだ。その背景にあるのは、例えば、製造技術の普及だ。半導体では製造装置が販売されている。半導体メーカーの苦戦に比べ、製造装置メーカーの業績は堅調といえる。太陽電池についても製造装置が販売されている。これだけで同じ製品が作れるほど製造業は甘くないのだが、こうした分野では基本的な製造技術が相当に普及していると考えていい。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

井熊 均 [日本総合研究所創発戦略センター所長/執行役員]

いくま ひとし/1983年早稲田大学大学院理工学研究科修了、三菱重工業(株)入社、90年日本総合研究所入社、95年アイエスブイ・ジャパン設立と同時に同社、取締役に就任(兼務)、97年ファーストエスコ設立と同時に同社マネージャーに就任(兼務)、2003年早稲田大学大学院非常勤講師(兼務)、03年イーキュービック設立と同時に取締役就任(兼務)、06年日本総合研究所 執行役員 就任。近著に『次世代エネルギーの最終戦略-使う側から変える未来』(2011年、東洋経済新報社)『電力不足時代の企業のエネルギー戦略』(2012年、中央経済社)。


井熊均の「性能神話」を打ち破れ

日本企業の凋落がとまらない。企業の産業戦略の基本理念であった「雁行モデル」では、もはやグローバル社会で戦えなくなってきている。その理由は、性能を上げれば逃げ切れる、という性能神話にある。今こそ日本企業は、単品の性能神話から脱し、自らの「組み合わせ」の強みを再認識し、グローバル戦略の中核に据えるべきだ。中国をはじめ新興国で多くのエコシティビジネスを手がける日本総研の井熊均氏が、日本復活のチャンスを問う。

「井熊均の「性能神話」を打ち破れ」

⇒バックナンバー一覧