ディー・エヌ・エーは
AI人材に1000万円

 そうした中で、早期から人材獲得に力を入れているのがディー・エヌ・エーだ。同社は16年にAI人材を大量に獲得する人事戦略を立て、AIシステム部を設立。当初、AI人材は数人だったというが、現在は70人を超える組織となっている。

「当時は『このゲームで遊んでいる人はこちらのゲームもオススメです』といったレコメンデーションを作るためにAI人材が数人いる状態だった。しかし次の時代はよりAIを活用したサービスを生み出せる企業が世の中の中心になっていくだろうという社長のビジョンの下、専門家を他社に負けない水準で集めようと、組織を作ることになった」と山田憲晋・AIシステム部部長は言う。

 そのためにできたのがAIシステム部独自の人事制度。給与は600万~1000万円の間で、専門分野の希少性や、プロジェクトマネジメント力を審査して設定される。それは転職者も新卒も区別はしていないという。

 AIは技術的にも新しく、現場で積んだ経験が付加価値になるわけでもないので、大学でAIを学んだ優秀な人材が即戦力で活躍できるケースは大いにある。審査では、5日間のプログラムで仮想シミュレーションを行い、実際に課題を解き、プレゼンテーションを行ってもらう。国際学会で発表された論文なども精査する。

「能力次第で新卒でも1000万円はあり得る」(山田氏)。会社から見た価値と市場性から判断して、報酬額は全く妥当だという。

 現在、AIシステム部のメンバーの3分の1ほどが新卒。毎年10人ほどの人材を採用しており、数年中に100人を超える組織にしたいと考えている。

「当社はこれから、ゲームだけでなく、自動車の運転を採点してフィードバックするサービスをリリースしているオートモーティブ事業、スポーツ事業、ヘルスケア事業など多岐に展開していく。AIを強みに各サービスで業界をリードしていくことがわれわれの使命」と山田氏は意気込む。