
そんな彼女は、自分のことを「価値のない人間」だと思っていました。「価値がない」からこそ、人一倍努力して目に見える成果を挙げなければ、自分は誰からも好かれないし、生きている資格すらないのだとまで思っていたのです。
そのため、E子さんは何もしないで一日を過ごすことは悪いことのように思っていましたし、「自分が楽しむために時間を使う」のは何より苦手だったのです。E子さんにとって時間とは、常に「何かの為になる」「有意義」なものでなければならなかったのです。
そんなE子さんにとっては、自宅療養で何もしないでいること自体が怠けのように思えてしまい、何度も「自分は本当は病気なんかじゃなくて、きっと怠けたいだけのダメな人間なんだ」と思っていました。そして、「会社の人たちに、きっと怠け者と思われているに違いない」とも感じていたので、一日も早く仕事に戻らなければと、とても焦っていたのでした。
しかし、この状態を「怠け者」と思ってしまうことも、自分の心の奥底に根強く巣食っている「自己否定」の産物であることがセラピーの中で徐々にわかってきて、やっとE子さんも「心を休ませる」休み方ができるようになっていきます。
すると、それまではいくら寝ても取れなかった疲労感や倦怠感が少しずつ薄らいできて、不思議なくらいエネルギーの高まりが実感されるようになったのです。
E子さんは現在も療養中ですが、最近ではセラピストの助言もあって、「やってみたい」と思ったならば「遊び」にも出かけてみるように、少しずつチャレンジし始めています。
「~すべき」「~してはならない」という「頭」の命令に常に従って窮屈に生きてきたE子さんのような人は、自分の「心」の「~したい」「~したくない」という声が聞き取れない状態に陥っているものです(詳しくは第1回をご参照下さい)。
そこからまずは、「心」の声を聴くことがわかるようになり、それを邪魔する「頭」由来の古い価値観(例えば「遊んだりしていてよいのか?」)の存在に気がつくようになります。そして、その「頭」の批判に惑わされずに、「心」に従った行動ができるように精神療法は援助していきます。
ですから、特にE子さんのようなケースでは、「遊べるようになる」ことは、大きな改善の証でもあるわけです。これは典型的なうつ病(内因性うつ病)のケースにも当てはまることで、治療過程の後半で、やはり「遊ぶ」ことが大切になってくるものなのです。
本人の考え方がこの「柔らかい状態」になっていないままに社会復帰を急いだケースは、私の経験上、むしろ早期に再発してしまう確率がとても高いという印象があります。
さて次回は、E子さんもアドバイスされていた「規則正しい生活が大切」という考え方について、検討を加えてみたいと思っています。
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