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政府系ファンド-国家が世界金融を支配することへの危惧

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第13回】 2008年1月15日
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 政府系ファンドとは、一般的に、政府(国)が運用する投資資金=ファンドのことをいう。国が自国の公的資金を運用することから、SWF(ソブリン・ウエルス・ファンド)あるいは国富ファンドとも呼ばれる。

 運用する資金は、産油国の原油代金の蓄積や、貿易黒字の拡大による外貨準備高などが原資になっているケースが多い。世界的なファンドの規模については様々な見方があるようだが、全体として2兆5千億ドルから3兆ドル(約300兆円)程度と見られる。最近、政府系ファンドの一部が、米国の経営悪化が懸念される米国の金融機関等に対して多額の出資を行うなど、金融市場での存在が注目されている。

政府系ファンドが持つ意味

 政府系ファンドを作る重要な目的は、蓄積した資金=富を出来るだけ効率的に運用することだ。国に蓄積した富を安全に運用するのであれば、米国等主要国の短期国債に投資していればよい。各国とも外貨準備については、そうした安全第一の運用手法を採っている。

 ところが、産油国のように莫大な原油代金が蓄積したり、中国などのように多額の貿易黒字が貯まると、その一部の資金を、ある程度のリスクをとって、より高い運用利回りを目指すことが有利との考え方が出る。それを満足させるために創設されたのが、政府系ファンドと考えればよい。

 多くのケースでは、高いノウハウを持った金融や投資に関するプロフェッショナルを雇用して、ファンドのリスク管理を行いながら、より高い投資効率を目指す組織になっている。産油国などのファンドでは、世界的水準から見ても、かなり高い金融技術を持った専門家がアドバイスや運用に当たっており、過去の実績も相対的に高い利回りを獲得しているといわれている。

 政府系ファンドの運用方針の一つの特徴は、基本的に短期な売買をあまり行わず、中・長期的な投資対象を選んで資金投下を行なうことが一般的だ。これは、主に短期の売買を繰り返して、高い収益を目指すヘッジファンドなどとは大きく異なる点である。そのため、ヘッジファンドのように、短期的に金融市場を大きく撹乱することは少なく、むしろ市場を安定させるメリットがあると指摘される。

一部の産油国が
世界金融を支配する危惧も

 政府系ファンドにも問題点が潜んでいる。一つは、運用が思ったとおり上手く行けばよいのだが、市場では何が起きるか分からない。時には、市場が大きく変動することで、ファンドが損失を蒙ることもあるだろう。その場合、失われるのは個人のお金ではなく、国富=国の公的資金である。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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