
電子部品のプリント基板に使われる「ソルダーレジスト」で世界シェア首位の太陽ホールディングスが、アクティビスト、資本提携先、創業家、プライベートエクイティファンドらの圧力にさらされ、文字通り“四面楚歌”に陥っている。2025年3月期に過去最高業績を更新したにもかかわらず、6月21日開催予定の株主総会で株主から解任議案を突き付けられた佐藤英志社長が取材に応じ、「株式の非公開化も手段の一つとしてあり得る」と明言した。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
オアシス「深刻なガバナンス危機に直面」
太陽HD社長に株主や提携先が“包囲網”
「太陽ホールディングス(HD)は非常に深刻なガバナンス危機に直面している」
太陽HDの株式を約11%保有する香港のアクティビストファンド、オアシス・マネジメントのセス・フィッシャー最高投資責任者(CIO)は、ダイヤモンド編集部の取材にそう語気を強める。
オアシスは今年2月、太陽HDの株式大量保有を公表し、5月7日に佐藤英志社長の解任を求めて株主提案した。太陽HDが17年にDICに行った第三者割当増資で創業家らの議決権を希薄化させ、医療・医薬品事業への参画や佐藤社長の報酬を上げる議案を可決したなどとし、「太陽HDの企業価値を毀損(きそん)した」(セス氏)というのがその根拠だ。
太陽HDの医療・医薬品事業についてオアシスは「多額の投資に対して収益が低く、減損を重ねた」と主張し、佐藤社長の報酬は「他の上場企業と比較して極めて高い」と批判する。
ここまでなら企業経営者vs.アクティビストという、今や上場企業で珍しくもない委任状争奪戦の構図にすぎない。だが太陽HDの場合、これに複雑な力学が絡み合う。
6月3日、資本業務提携パートナーとして太陽HDの株式20%を保有するDICが、佐藤社長の選任に反対する議決権を行使すると発表したのだ。DICは「佐藤社長を筆頭とする太陽HDの取締役会は、中長期的な企業価値向上および株主共同の利益最大化に向けて、必ずしも適切に機能しているとはいえない」と表明。資本関係の在り方を見直す方針にまで踏み込んだ。
17年に保有株式を希薄化された側の太陽HD創業家の資産管理会社も、佐藤社長に反対票を投じるとみられる。アクティビスト、資本提携先、創業家を合計した株式は議決権の40%を超える。過半数の承認が必要な佐藤社長の取締役再任は、限りなく赤に近い黄信号がともっているといえる。
さらに2月以降、KKRなど複数のプライベートエクイティファンドが、太陽HDに買収提案を行っていることも分かった。まさに“四面楚歌”の局面を、佐藤社長はどう乗り切るつもりなのか。佐藤社長への直撃インタビューを次ページで公開する。