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今週のキーワード 真壁昭夫

五輪を見て気づいた“弱い個人”と“強いチーム”
「失われた20年」を打ち破る日本人のメンタリティ

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第238回】 2012年8月14日
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不調の柔道、好調のサッカーや水泳
個人競技もよりも団体競技が好成績

 ロンドンオリンピックが、いよいよ佳境を迎えている。わが日本人選手の活躍を見ていると、日本人の精神構造が、その結果や成績に如実に反映されている気がする。

 それは、個人の力を競う個人競技よりも、何人かがチームを形成して戦う団体競技の方が、それぞれの選手が生き生き競技をしているように見えるからだ。おそらくチームで戦う方が、日本人のメンタリティ=精神構造には適しているのだろう。

 今まで日本のお家芸として好成績を上げてきた柔道は、柔道の世界的な普及に伴って強豪国が増え、予想したような成績が上がらない。それぞれの試合を見ていると、各階級の競技者が個として孤立しており、1つのチームとしての感覚が希薄化していることがあるのかもしれない。

 そうした状況下、他の国の追い上げと柔道のスタイルの変化に、わが国が十分に対応できていない事情もありそうだ。こうのような光景は、ある意味、韓国や台湾メーカーに追い上げられて、それぞれの企業が孤立しているわが国の産業界を髣髴とさせる。

 一方、サッカーやフェンシングなど、チーム競技になると状況が異なる。個々の選手が、チーム内での責任感というモティベ―ションと、チームメイトの精神的な支えによって実力を発揮しているように見える。そうした例を見ると、日本人が持つ強い責任感と、何らかのサポートを必要とする精神構造が現れているようだ。

 もともと日本人は、チームを組むと「自分がチームの足を引っ張るわけにはいかない」という強い観念を持つ。それは、チームに対する帰属意識と責任感につながる。

 一方、我々日本人は、相対的に個人主義の観念が薄く、自分1人が他の人と異なる道を歩くことに不安を抱きがちだ。そのデメリットを消すために、チームを組むことは有効な対応策の1つなのだろう。

 考えてみると、戦後のわが国が辿った「20世紀の奇跡」と呼ばれるほどの高成長は、多くの国民が共通の目的意識を持って努力した結果と言える。“失われた20年”を克服するためには、我々日本人は原点に帰って、日本人の精神構造を見直すことが必要かもしれない。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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