生活保護にまつわる問題の1つ1つに関して、責任の所在や解決方法が議論される時、ほとんど完全に忘れられている存在がある。生活保護世帯で育つ、20万人以上の子どもたちだ。一体、子どもたちは、どんな生活をしているのだろうか。そして、厳しい状況にある子どもたちに、周囲の大人たちは何ができるのだろうか。
今回は、1987年から25年にわたって生活保護世帯などの子どもたちを対象に開かれている「江戸川中3勉強会」の取り組みを紹介したい。
これが「勉強会」?
普通の中学生が集まる、夕方の集会室
Photo by Yoshiko Miwa
7月の火曜日の夕方、18時00分。
東京都・江戸川区の、とある区営施設の集会室入り口に、目立たない掲示がある。掲示には「江戸川中3勉強会」と書かれている。
入り口近くのテーブルに、中学生向けの問題集や参考書が積み上げられている。書名には「基礎」「基本」「わかる」といった言葉が目立つ。中1・中2向けのものも多い。いわゆる「教科書ガイド」もある。中学3年生向けの勉強会らしさを伺わせるものは、都立高校の入試問題集と進学ガイドブックだ。
スタッフが少しずつ増えてくる。年齢は、主に20~30代に見える。服装は、大学生風であったりスーツ姿であったり、まちまちだ。スタッフは、社会人ボランティアと江戸川区職員からなり、現在8名程度。大学生ボランティアは重要な存在なのだが、現在は1人もいない。
18時30分ごろ。中学生が、1人、また1人、続いて2人連れで、というふうにやってくる。やって来るなり、スタッフと雑談する中学生。テーブルに着いて、学校の宿題を自発的に始める中学生。行動はまちまちだ。スタッフの誰かが、積極的に指示したり指導したりしているわけではない。現在、6~7名の中学生が参加しているという。スタッフによれば、「例年に比べると、7月にしては多い方」だ。
中学生たちに、特別な特徴があるわけではない。明るかったり、はにかんでいたり。概して、ごく普通の、屈託ない14~15歳だ。服装は、男子はTシャツにカーゴパンツ、あるいはTシャツにジーンズ。どこにでもいる「ストリート系」の十代男子。女子は、少しだけレース飾りがあったりするフェミニンなロングTシャツに、夏らしい薄手のフレアスカート。スカートは、この夏流行している、重ね履き風のものであったりもする。やはり、どこにでもいそうな、「おしゃれ」に目覚めた十代女子。敢えて特徴を挙げるとしたら、安価な衣料量販店でよく見かけるタイプの服であることくらいだ。