突如目に飛び込む不思議な建物
元弥彦神社権宮司宅で聞いた仰天話

 この夏、新潟県西蒲原郡に赴いたときのこと。食事を終え、弥彦神社の駐車場に戻ろうと路地裏を歩いていた。暑さのせいもあったかもしれない。左に曲がるべきところをなぜか、右に折れてしまった。車が1台やっと通れるほどの小道で、若干の下り坂。人通りはなく、ひっそりとしていた。

 間違えたかなと思った瞬間だった。ただならぬ建物が目に飛び込んできた。大きくて古色蒼然とした木造の建造物。民家のように見えたが、集会場のようにも何かの道場のようにも思えた。

 小道からだいぶ奥まったところにあり、ひょいと覗き込むわけにもいかない。そのまま通り過ぎることもできず、立ち止まって周囲を見渡すと、こんな看板が置かれていた。

「岩倉具視右大臣御宿泊の邸宅」。そして、建物の風情とは全くそぐわない「喫茶 ギャラリー余韻」という看板も。

 いったい何だろう? 好奇心を抑えることができず、寄り道することにした。喫茶と書かれているのだから、誰でも中に入れるはずだと思ったからだ。

 それでも恐る恐る歩を進めると、正面に大きな玄関があり、脇にも小さな出入り口が。ともに暖簾がかかっていて、どちらから入るか迷う。思い切って小さな暖簾をくぐって声をかけると、「正面からお入り下さい」との女性の声。

 靴を脱いで建物の中に入ると、男性がにこやかな顔で迎えてくれた。館長の鍋島紘一さんだった。喫茶を注文する前に、館長が建物の説明と案内をしてくれた。偶然出くわして、何も知らずに足を踏み入れた者にとって、びっくり仰天する話ばかりだった。