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岸博幸のクリエイティブ国富論

危機にあるのは領土だけじゃない
ソフトパワーでも中国に負けている日本の現実

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第197回】 2012年8月24日
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日本の国力の低下

 竹島、尖閣諸島と日本の領土が次々と脅かされる中で、韓国の李明博大統領は「国際社会での日本の影響力も以前ほどではない」と言い放ち、米国では共和党大統領候補のロムニーが「米国は10年も衰退と困窮に苦しむ日本のようにはならない」というひどい発言をしました。

 これらの屈辱的な発言から改めて明らかになるのは、日本の国力の低下です。国力の低下と言うと当然すぐ思い浮かぶのは、経済力の低下でしょう。実際、20年にわたってデフレが継続する中で、名目GDPは1997年の523兆円から2011年には468兆円にまで減少しています。グローバル市場での電機メーカーの凋落も日本の経済力の低下を象徴していると言えます。

 しかし、国力の構成要素は経済力だけではありません。ソフトパワーもその1つです。ソフトパワーとは、他国を自国に引きつける力とかファンにする力と説明されることが多いですが、典型例としてはハリウッドの映画や国際放送のCNNが挙げられます。これらは世界の人々に米国の価値観を刷り込んでいるのです。

 そして、伝統文化やポップカルチャーなどの文化水準の高さから、これまでよく日本のソフトパワーは強いと言われてきました。しかし、それも過去のものとなりつつあります。経済力のみならずソフトパワーの分野でも日本は中国に負け始めているのではないでしょうか。

中国のソフトパワー強化に向けた取り組み

 実際、中国の新興国エリアにおけるソフトパワー強化に向けた攻勢には凄まじいものがあります。その例として、東アフリカにおける中国の取り組みを見てみましょう。

 中国は、ケニアを東アフリカ展開の拠点としていますが、首都のナイロビでは、国際空港の拡張に2.1億ドルを、そして高速道路網に2億ドルを拠出しているのみならず、マスメディアにも盛んに進出しています。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

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