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高橋潔 「脱」ガラパゴス人事

「ドラえもん亡国論」
将来のリーダーシップを問う

高橋 潔 [神戸大学大学院経営学研究科教授]
【第5回】 2012年8月27日
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リーダーシップの強敵あらわる

 次代を担う子どもたちは、どれほど豊かなアイデアを持っていると思いますか?

 光村図書小学2年生国語の教科書には、「あったらいいな、こんなもの」という単元がある。子どもたちが、想像力を働かせて考えた夢のアイデアを人前で話し、それをお互いに聞き合うことを意図しているという。

 そこで出されてくる子どもたちの夢はといえば、「空を自由に飛べる道具」とか、「なんでも出てくる装置」とか、「宿題をやってくれるロボット」とか、だいたい似たり寄ったりだ。アイデアは、ほとんど『ドラえもん』化している。

 『ドラえもん』化のなにが問題なのか? それは、アイデアが独創的でないということではない。一言でいえば、「便利であること」だけに、自分たちの意識が向いていることだ。コンビニエンスの発想しか浮かばないのである。

 そこには、苦労をしても、新たな価値観を創造したり、自ら道を切り開いていく力強さはない。便利さに慣れてしまうと、自分は汗を流さず、なんでも思った通りのことを、文句ひとつも言わないで実現してくれる『ドラえもん』がほしくなるものだ。

 もし、小学生全員が、のび太のように、「自分にもドラえもんがいればいいのにな」と思っていたとしたら、この国からリーダーシップが生まれるというのは期待薄だ。『ドラえもん』のような便利な執事役は、リーダーシップの強敵である。リーダーシップの国アメリカでは、『ドラえもん』のアニメ放映権契約が結ばれていながら、放映もビデオ販売もされていない。半ば意図的にお蔵入りにされているのは、なるほど象徴的である。

 2011年3月11日の大震災をきっかけにして、はっきりとわかってしまったことがある。それは、わが国にリーダーシップが欠如しているということだ。震災復興に向けての政府や東電などの動きを見ていると、肝心な場面で、リーダーシップが強く国民から求められていながら、リーダーシップが不在であることに気づく。

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高橋 潔 [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1984年慶應義塾大学文学部卒業、1996年米国ミネソタ大学(University of Minnesota)経営大学院博士課程修了(Ph.D.)。南山大学総合政策学部助教授などを経て、現在,神戸大学大学院経営学研究科教授。専門は産業心理学と組織行動論。経営と人事管理に関連した事象を心理学的なアプローチから研究している。主な著書に『〈先取り志向〉の組織心理学―プロアクティブ行動と組織』(有斐閣・分担執筆)、『人事評価の総合科学―努力と能力と行動の評価』(白桃書房)、『Jリーグの行動科学―リーダーシップとキャリアのための教訓』(白桃書房 編著)など。


高橋潔 「脱」ガラパゴス人事

日本企業の人事制度・人事施策を別の視点から考え直す。それが本連載の目的だ。これまで、長期の雇用と年齢にともなった処遇を旨としてきた日本の組織。それが、グローバル時代に通用しなくなってきた。たとえば、新規学卒者の一括採用、年次によるキャリア管理、処遇に直結しない人事評価、OJT偏重の人材育成、遅い昇進と幅広い異動など。これを象徴的に「ガラパゴス人事」と呼んでみよう。日本の組織で特有に生まれた人事の仕組みについて、ミクロの視点から鋭く切り込んでいく。また、グローバル展開を目指す組織にとって、現状の問題点をあぶりだす目と、変革のための示唆を与えていく。

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