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商社を支える“いまどき” ビジネス

商社の農業参入で国内自給率はアップできるか
大震災を乗り切った豊通グループ
国産パプリカの可能性

【第4回】 2012年8月31日
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 2005、2009年の農地法改正以降、農業への新規参入規制が大幅に緩和され、農業に参入する株式会社が急増している。そうしたなか、意外な大企業も農業への参入を果たした。それが総合商社の豊田通商グループ(以後、豊通グループ)だ。豊田通商の子会社である豊通食料は、宮城県栗原市の地元農家と共に出資し、農業法人ベジ・ドリーム栗原を設立。現在、パプリカ栽培では、国内最大の栽培面積を誇る規模にまで拡大している。

 そもそもパプリカといえば、スーパーなどの量販店では韓国産、ニュージーランド産はよく見かけるものの、国産品にはめったにお目にかかれない野菜だ。未だ日本ではメジャーな農作物ではないため、正確なデータはないものの、現在のパプリカの流通量は輸入・国産をあわせて2万7~8000トンほど。そのうち国産は5~10%程度を占め、現在ベジ・ドリーム栗原では年間840~900トンを生産する。

 国内での自給率がまだまだ低いパプリカだが、なぜ同グループは商社でありながら、パプリカ生産に参入したのだろうか。

“農業経験ゼロ”からパプリカ生産に参入
きっかけは「顧客の声」にあった

ベジ・ドリーム栗原で栽培しているパプリカ。現在、5種類のパプリカを栽培している。

 きっかけは、6年ほど前にさかのぼる。06年に豊通グループの豊通フーズとトーメンフーズが合併、07年には豊田通商食料部門の一部を事業承継すると同時に現在の豊通食料が誕生した。そうしたなかで同社は、「食料専門商社として特色を出したい」との思いから、目玉になる事業を模索していた。

 そんなときだった。もともと豊田通商では輸入パプリカを扱っていたのだが、ある日、顧客の1人から「もっと、みずみずしいパプリカがほしい」との要望を受けた。それは即ち、「安心・安全で新鮮なおいしい国産のパプリカがほしい」という声だった。

 「ニーズがあるなら小さい畑からでもやってみよう。そう思い始めました」

 こう語るのは、豊通食料とベジ・ドリーム栗原の代表取締役を務める高橋誠一郎さんだ。当時、まだ国内でパプリカを生産する農家は少なく、商社が参入しても競合する可能性は低い。しかも日本の農業自給率アップに貢献することもできる。こうして09年3月、まずテスト農場として宮城県栗原市に0.7ヘクタールの耕地面積を持つ第1農場を完成させ、生産を開始。今では、10年6月末に完成した第2農場4.2ヘクタールと合わせて約5ヘクタールで生産を行っている。

 しかし、農業に参入するといっても、豊田通商には農業の経験がなかった。実際に、立ち上げからこの事業に参画し、現在はベジ・ドリーム栗原の取締役を務める樋江井秀仁さんも、以前は豊田通商で輸入野菜を取り扱っていたが、この事業に参画するまで農業経験はゼロだったという。

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世間一般には、「モノやサービスを仲介する仕事」と思われがちな商社だが、足もとでは、従来の価値観に囚われない事業展開を行なっている。有名なのは、世界中で需要が急増している資源・エネルギー分野のビジネスだろう。採掘から、製品化、流通・販売まで、全てのプロセスに投資を行なう各社は、資源高の恩恵を享受して、軒並み収益増に沸いている。しかし、彼らが参入しているビジネスは、こうした重厚長大分野に止まらない。時として、衣食住に関わるコモデティ分野まで深く入り込み、ビジネスの裾野を着々と広げている。この連載では、商社の屋台骨を支える「いまどきビジネス」を詳しく紹介しながら、日本企業が新しいビジネスを生み出すためのヒントを考える。

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