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ソーシャルディスラプト最前線

【新連載】ソーシャル上の"評判"によって、
既存ビジネスの基盤は、いかにディスラプト(破壊)されていくのか

岡本彰彦 [Recruit Strategic Partners, Inc. 代表]
【第1回】 2012年9月4日
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 これまで宿泊先を決める判断は、「有名な雑誌に掲載されているから」「大きな旅行会社のツアーに組み込まれているから」などの状況によってなされていた。しかしAirbnbは、そうしたものの代わりに、「ソーシャル上に展開されているデータ」、つまりどんなレビューをされているか、どんな友人関係をもっているかなどを判断材料として提供する。すると例えば、レビューで高評価を受けている事実や「この人は自分の友人の友人だ」という関係性が明らかになり、それが信頼を担保するのだ。

 このように、これまでは企業が一定のコストを負担して担保しなければならなかった「信頼」を、個人のソーシャルな繋がりで担保することによって、「知らない人の家に泊る」「知らない人を泊める」という一見、ハードルの高そうなことがいとも簡単に成立するのだ。

 2008年にサンフランシスコで始まったこのサービスは、当初は普通にホテルに泊まるよりも安く宿泊できることが売りだった。しかし例えば、「あそこのホストは面白い!」と言うと、そうしたネタはSNS上ではすごい速さで伝播する。個性が人気に繋がるのだ。

 となれば、提供される物件も自然と個性的なものになり、現在では、断崖絶壁にある家や停泊している船に泊れるなど、既存のホテルなどと違った新しい経験を提供するかたちに変化した。その結果、急成長を遂げ、今年6月には1000万泊を達成し、半年前から予約しなければならないくらいの人気物件もあるサービスとなった。

 このサービスでは、SNSがゲストとホスト両方の「信頼」を担保している一方、レビュー自体が口コミとなること、また口コミを自然に起こすような個性的な物件があることで広告を大々的に打つ必要がなくなっている。

 このように、従来ならば企業が負担しなければならなかった信頼担保のためのコストとマーケティングコストを大幅に低減できることで、スタートアップ(起業したばかりの小さな会社)でも短い期間で成功し、ホテル業界、旅行業界など既存企業の脅威となった。

 これもまた、新しいビジネスが既存のビジネスの構造を破壊し始めている例と言える。しかもソーシャルメディアの特性をフルに活用したディスラプトだ。

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岡本彰彦
[Recruit Strategic Partners, Inc. 代表]

株式会社リクルートの投資会社であるリクルートストラテジックパートナーズの代表取締役として、コーポレートベンチャーキャピタルファンドを活用し、日本のみならず、北米、東南アジアをはじめとしたグローバルな投資·事業開発活動を推進する。現職就任以前は、銀行、ベンチャーキャピタル、証券会社などでストラクチャード·ファイナンスや新事業開発に従事した後、2007年にリクルートに入社し、主に同社住宅カンパニーにおける事業開発の責任者とブランドマネジャーを担当。

ソーシャルディスラプト最前線

Facebook、Twitterといった、いわゆる「ソーシャルネットワーク」が日々の生活にかかせないもの、あえて言えば"必須のインフラ"となったことで「ビジネス」の変化が急激に進んでいる。
電力インフラの整備が、モータリゼーションの加速が、パーソナルコンピューターの普及が、かつてビジネスの変化を決定づけたように、いま現在、「ソーシャル」はビジネスにどのような変化をもたらそうとしているのか?
実際にソーシャルを使ったビジネスで急激に成長するサービスを紹介しながら、その変化の兆しを探っていく。

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