マニフェスト選挙が、単なる「ショッピングリスト(買い物リスト)選挙」に成り下がってしまっている。このままでは政権選択選挙というよりも、「子ども手当選挙」だったり、「農業者戸別所得補償選挙」や「高速道路無料選挙」になってしまいそうだ。

 筆者が本連載の第1回目から指摘しているように、民主党の政策にはかなりはっきりとした理念的裏付けがある。それがこれまでの日本の政治との大きな違いだと筆者は思っているし、その理念を掲げた政党が政権の座につくことがあれば、政権交代はさらに大きな意味を持ったものになると考えている。

 その意味で、今回の民主党のマニフェストには、どうしても不満を禁じ得ない。発表されたマニフェストはよく練られてはいるのだが、結局、政策が羅列してあるだけで、これを読めば民主党が日本をどう変えようとしているかが誰にでもわかるような内容にはなっていない。もっとも、そうなることが予測できたからこそ、『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』<という本を刊行し、本連載も書いているのだと言えばそれまでなのだが。

この際だからマニフェストの問題点を語ろう

 筆者は民主党の結党以来、その政策に関心を持ち、取材を続けてきた。民主党の政策については、現在のポジションのみならず、そこに至る経緯や背景も、それなりに理解しているつもりだ。その筆者から見て、今回の同党のマニフェストは、予想どおりとは言え、やはり物足りないものだった。

 1つお断りしておくが、財源問題などを取り上げて、民主党のマニフェストに挙げられた個別の政策を叩くことが、ここでの私の真意ではない。私が批判したいのは民主党の政策ではなく、マニフェストのあり方そのものだ。今回のマニフェストでは、民主党の政策の背後にある理念や哲学が十分に伝わらないばかりか、民主党政権がどのような政権になるかについて、誤解を生みかねないからだ。

 その背後には、現在の日本のマニフェスト選挙の限界がある。民主党は意図的に、自分たちの主張や理念を前面に出さないマニフェストを作成したのかもしれない。なぜならば、今の日本では、マニフェスト本来の目的である政党の理念や哲学を前面に出すと、むしろ選挙で不利になる可能性が大きいからだ。そこにこそ、現在の日本のマニフェスト選挙が内包する本質的な問題がある。